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14.私は君で、君は私だ ページ16

中也と蓬髪の男は、私を無視しているのか、はたまた2人にとっては居ない存在なのか…

唯、睨み合っていた。

「思わないねぇ…だから首領の頼みを聞き入れて、こうやって躾ているのだよ。でなければ…」

でなければ…。

この時、自分が何を云わんとしていたのか、今でも覚えている。

だが、それも又信じていなかった故に云わなかった。

「でなければ…何だよ?」

"あの時の私"の口角がゆっくりと上がっていった。

「…何だろうねぇ?」

「ッ!?」

"ヤツ"は私を見ていた。どす黒い瞳を私に向けてきた。

歩を進めて私との距離を詰める。

「ねェ、教えてくれ給えよ。でなければ…何だい?」

不気味に笑みを浮かばせながら私に顔を近付けてきた。

気持ち悪いことこの上ない。

「そう睨まないでくれ給え。私は答えが知りたいだけなんだ」

「君もいずれ判るだろう。私に聞くな」

「云えないからかい?」

「……今の君に私が判るかい?」

不穏な空気がずるずると流れていく。

ヤツは更に笑みを深めた。

「私は君で、君は私だ。判らない訳がないだろう」

片手で肩を突き飛ばされ、不覚にも体勢を崩してしまい、

体が後ろに傾く。

だが、倒れなかった。

後ろから誰かが支えてくれたのだ。

直ぐに体勢を整えて、振り向こうとするが、後ろの誰かがそれを許さない。

私の服を掴んでいる。私の背中に頭を預けている。

この感覚は、中也じゃない。

「兄さん…」

Aだ―――。

目の前の私はまだ笑っている。

「A、何処に行っていたんだい?

というか、放してくれ給え」

「兄さん…如何して付いて来てくれないの?」

Aを見ようとするが、この子が私を掴んでいる限り到底出来ない。

「私はちゃんと付いて行ったよ。

君が勝手に消えたんじゃないか」

「如何して…如何して兄さんだったの?」

何の話だ?

不思議に思い、名前を呼んで無理にでも向き合おうとした瞬間…前から来た殺気にはっとした。

ヤツが刃物を振りかざしている。

間も無く振り下ろされ、反射的に庇うように前へ出した手を刺される。

「くっ…!」

刃が私の喉元に突き出ていた。

ヤツは力を抜く事なく押し付けてくる。

だんだんと力が抜けていく。

このままでは、間違いなく私は喉を切り裂かれる。

「如何して…仲間に歓迎されたのが兄さんだったの?」

「「私なら善かったのに…」」

2人の声が重なる。

心臓が大きく跳ね、ガクンと力が抜ける。

喉に刃が突き立てられた。

15.此処は何処か→←13.此処は何処?



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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時

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