🖤告げられた言葉は不安そのものだった ページ5
エースside
手にした鏡に魔力を込める。僕が得意な魔法は空間の操作だ。鏡みたいな魔力を純粋に反映してくれる物に魔力を込めると、僕の知っている同じような物と繋がって通信機みたいにその場の映像を見ることが出来る。言うならビデオ通話がいつでも出来る魔法だ。
『マルフィ、マルフィ、聞こえるかい?』
繋げた先は彼の持つ手鏡だ。いつも持ち歩く鏡の場所さえ分かれば、僕はマルフィを迎えに行くことが出来る。
見えるのは一面真っ暗な画面だ。マルフィの姿も、声も聞こえない。どうなってるんだ、マルフィ……一体どうしたんだろう……っ
「"お前は誰だ"」
静かな女性の声が聞こえた途端、全身が圧倒的なプレッシャーで押し潰された。凛とした冷たい女性の声。その声はまるで、女王陛下の御前に出ているような威圧感があって、一瞬にして僕は体が硬直した。
「"その血のように赤いハート……、あぁ、そうか。我が愛しの鴉が懇意にしているトランプ兵か…"」
『…あ、なたは…っ』
間違いない。暗い森の古城に住む、彼が敬愛してやまない主人。
『マレフィセント、様……っ』
「"ほぅ、我が名を知っているとは…。嬉しい限りだ、ハートのトランプ兵よ"」
な、何で…何でこの人が、マルフィの鏡を…!?
目の前に映る暗闇の中央がぼんやりと緑に光り輝く。炎のような光の中から現れたのは、ぞっとするほど美しい容姿を持つ、対になった角が特徴的な黒い衣に身を包んだ女性だ。
マルフィのマスターヴィランズ、眠れる森の女主人、マレフィセント。僕の前に現れた彼女は、じっと僕を見つめていた。冷や汗が顎を伝い落ちる。視線がその緑の瞳から離れなくて、そのプレッシャーに思わず膝をついて頭を垂れたくなるほどだ…っ
「"そう気負うな。我が美しい鴉の行方を知りたくて魔法を使ったのだろう"」
『…!は、はい…っ、……彼が突然ハイタワーから姿を消したと友人から聞きました。彼の持つ鏡の場所さえ分かれば、私の魔法で見つけることが出来ると思い、こうして彼の持つ手鏡を通して辺りの様子を見ようと思ったのですが……、何故貴女様が彼の手鏡を…?』
まさかマスターが出てくるなんて思わなかったけれど、マスターが手鏡を持っているってことは、彼は手鏡すら手放してどこかに行ったのか?まさか、絶対にありえない。鏡を失ったら失神するマルフィだぞ?死んでも鏡を手から離さない筈だ。
「"…お前には話しておこう"」
そう仰った彼女は、僕に全てを話してくれた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時