鍾愛 ２５ ページ26
中也さんとの取引内容を聞く。中也さんは今地方で任務中だ。此奴はそれを全て知っていた。
タイムリミットは二十四時間を切っている。間に合う筈がない……が、
(私はこれでも準幹部だ。こんな事ではポートマフィアの名が廃る)
自分の事は自分で如何にかしなくてはいけない。
「そう云えば、君の話は良く聞いてるよ。地味で戦果も劣る裏社会からは本来縁遠い人間であるとね」
『…それが何だと』
「君は弱い。異能無しじゃ何もできない上に役職という権利の上に眠ったままだ」
横溝は嫌らしく舌舐めずりをした。加虐心に満ちた表情に鳥肌が立つ。膝下の傷口を舐め上げられて痛みに目を瞑る。
「私はね、人間の憎悪に満ちた顔が大好きなんだ。さぁ、もっと歪んで見せろ!」
ねっとりとした気持ち悪い感触を太腿に感じた。あまりの不快感にこのまま気を失ってしまいたいと思った。然し私は此処で此奴の思い通りに動く訳にはいかない。
好機を逃すな。一つ一つの言動行動を全て把握して記憶しろ。
「さァ、お楽しみの時間だ」
横田が私のドレスを切り裂こうとした時に入り口の扉が開けられた。
「全員男を射て!櫻田準幹部には何があっても当てるな!」
バタバタと室内を走り横田を包囲したのは全員部下だった。
救援により少し安心したと同時に何か嫌な予感がした。それは私の前にいた男がふっと笑ったのが見えたからだろうか。
バン、と発砲音が響きわたるがあたりの景色が煙に巻かれて良く見えない。
がしかし、次の瞬間少し離れた場所でバタバタと人が倒れていくような音と呻き声が聞こえた。それは間違いなく横溝のものではなく、部下の声だった。
(一体、何が…!)
煙が晴れてそこに広がっていたのはあたり一面の血だまり。その血溜まりに横たわる人間は皆私の部下だった。
『…嘘!』
余りの光景に目を見開き息を呑む。
私が、身動きが取れぬ間に部下は…
…私が調査不足で、しくじったから。
この人の異能は…弾を跳ね返す異能？
これだけでは断定的でない。もっと、何か情報がないのか。
改めて自分の無能さに下唇を噛む。
「何が起こったかわからないような顔をしているねえ。実に滑稽だよ」
目の前で悠々と笑っている男に焦燥感が芽生える。
横田はネクタイをしゅるりと解くと私の目元に結びつけた。…この感覚は、何時ぶりであろうか。あの時とはまた違う恐怖心と戦慄が身体を支配する。
首領なら、太宰さんなら…彼らだったらこの状況をどうする。
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あい - ？？？ (1月29日 23時) (
レス) id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新中でしょうか？ワクワクです (1月29日 20時) (レス) @page43 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - これ太宰さんどうなっちゃうんでしょうか……あと文才ご凄くありますね！ (1月22日 11時) (レス) @page31 id: 68fda9e290 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - こういう系あまり読み続けられないんですがこれは一気に読めちゃいました…!文章能力すごい高いですね…尊敬…更新待ってます!頑張ってください! (8月26日 15時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
ライム - こういう物語って大体中也ポジの人は振られちゃうので、この展開メッチャ好きです！私が中也推しなのもあるかもですけど、wとにかく更新楽しみにしてます！ (2023年3月25日 3時) (レス) @page42 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜雪
| 作成日時：2020年1月25日 21時
