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鍾愛 26 ページ27

もう何時間経ったかもわからない。時計もない部屋の中で私はひたすら肉体的な暴力の拷問を受けていた。痛みと、痛みによる快楽の繰り返し。いつ意識が切れてもおかしくは無い。

血や死体の腐敗臭ははとうの昔に忘れてしまうほど嗅覚は莫迦になっていて、ただただ与えられる激痛に耐えていた。

ポートマフィアからの救援は望みが薄そうで、此処で私は死を待つしかないのか。

こんな状況になっても冷静な自分を称賛しよう。打開策が思いつかないのは自身が如何に"無能"であるかを思い知らされた、が。


「抵抗しないと云うことは、諦めたと云うことで良いのかな?」

『貴方に命乞いなんてしな…ぐぅっ!』

「全く。手のかかる子だよ」


腕の部分に激痛が走り、何が起きたのかわからなかったが血がどくどくと溢れ出る感覚とナイフのひんやりとした冷たい感覚が腕に残っていた。

こんなの、組合戦で瓦礫が肺につき刺さった時と比べたらまだマシだ。じりじりと保たれる意識はポートマフィア加入五年目の賜物であろう。


「タイムリミットまで後十五分だ。遺言位は聞いてあげよう」


もう、そんなにも時間が経っていたのか。私の本来の計画ならもう中也さんの任務に加わっていたはずなのに。


『貴方の目的は何』

「単純さ。ポートマフィア首領を暗殺してこの国の隅々を支配する王の座に君臨する事だ」

『…貴方が首領を殺せるわけが無い』


「はは。負け犬の遠吠えだね。これだけ時間が経っても救援が来ない。ポートマフィアの最弱準幹部は見捨てられたと云う事だ」


そんな事、わかっている。
だが私は生憎死ぬつもりはない。好機を待て。拘束器具なら何時でも外せるようにしてある。今の私にできること____は。


一瞬思考が止まった。
もう私は限界なのか。…嘘。こんなところで終わってしまうの。それは駄目。絶対に駄目。


それでももう、思考は働かなくて辺りの景色にもやがかかって歪む。


「予定より早く済んでしまいそうだが仕方ないね。ゆっくり休みなさい」


吐き気のするような甘ったるい声を最後に聞く羽目になるとはつくづく私も運が悪い。


(ごめんなさい…私は何も残せなかった)



そうしてふっとくらくらとする意識の中景色が暗転する。


「悪ィA。遅くなっちまった」


最後に見えたのは窓を打ち破って来た傷だらけの上司の姿だった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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あい - ??? (1月29日 23時) (レス) id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新中でしょうか?ワクワクです (1月29日 20時) (レス) @page43 id: 59cf03caf8 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - これ太宰さんどうなっちゃうんでしょうか……あと文才ご凄くありますね! (1月22日 11時) (レス) @page31 id: 68fda9e290 (このIDを非表示/違反報告)
- こういう系あまり読み続けられないんですがこれは一気に読めちゃいました…!文章能力すごい高いですね…尊敬…更新待ってます!頑張ってください! (8月26日 15時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
ライム - こういう物語って大体中也ポジの人は振られちゃうので、この展開メッチャ好きです!私が中也推しなのもあるかもですけど、wとにかく更新楽しみにしてます! (2023年3月25日 3時) (レス) @page42 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜雪 | 作成日時:2020年1月25日 21時

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