【薄桜鬼】看板娘は敵の身内 其ノ四

番外：兄妹 ページ10

もうすぐ年越しだが、土方はとある牢屋敷に来ていた。

前もって罪人のとの面会の許可を取っていたため、見張りの者は土方の顔を見るなりすぐに開門をし、中へ通した。

罪人が武器を奪って逃げることや、面会人が私怨で罪人を殺害することを防ぐため、入り口で刀は全て預けるきまりとなっている。
脇差くらいは良いのではないかと思いつつも、土方はこれも規則だからと何も言わずに従った。

見張りは土方を案内することなく、元の定位置に戻って行ってしまう。
土方は冷たくも感じる見張りの対応に何を言う事もなく勝手に歩き始め、牢の最奥まで来たあたりで、今日会いに来た人物を見つけた。


「・・・よお、久しぶりだな」

「土方、さん・・・？」


格子の向こうにいるのは随分と年若い、少年とも取れるような見目の青年。
特徴的な赤みがかった髪や、少し人懐こそうな目元は、土方の下で下女をしてる少女と同じだ。

そんな彼は、京中を騒がせた人斬り――――岡田以蔵である。


「お前の妹からの文を預かって来た。―――いるだろ？」

「Aから！？」


懐から文を出して見せると、ガンッと丈夫な格子を突き破るような勢いで突進してきた岡田には、流石の土方も驚いた。
だが、妹想いな兄である岡田以蔵であれば何も不思議な話でもないな、と文を彼の手に渡す。

岡田は文を硝子細工でも扱うかのように優しく抱いてから静かに読み始めた。





岡田以蔵が文を読む間、暇な俺は屋敷の者が持ってきた茶で喉を潤しつつ彼の体の状態を見る。
一時期よりは顔色も良くなっているし、指先も今は綺麗で傷一つない。

無遠慮に見つめていたが、幸い岡田以蔵は文の内容を食い入るように見ているため、こちらの視線には気が付いていないようだ。



下手な心配をかけないようにAには岡田以蔵は元気だと伝えていたが、初めの頃のこいつは、それはもう酷い有り様だった。


――――――――――――――――――


―――――――――――――


―――――――

番外：兄妹其ノ二→←百五十六

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す