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番外:兄妹其ノ四 ページ13

新選組にAを預け、投獄されてしばらく。
おそらく一週間以上経つが、新選組からAの容体についての報告は来ない。

―――もしかしたら死んだのかもしれない。
僕にそれを伝えて自害することを危惧し、報告に来ないだけなのかもしれない。

食事も喉を通らず、夜も眠れず、身の内に渦巻く絶望と焦燥の念が今にも爆発しそうだった。
・・・いや、無意識に壁を引っ掻いたり格子を殴りつけては体に傷を負い、それでも止められないのだから、僕はもう壊れてしまっているのかもしれない。


それから何日か経って、土方歳三がやって来た。

彼は僕を見るなり「お前、岡田以蔵か?」と戸惑うような視線を送って来た。
・・・いったい、彼には僕がどう見えていたというのだろうか。


土方歳三が来た理由は、やはりAについて色々と僕に話すためだった。


「今あいつは新選組の下女として預かっている。怪我の後遺症も特にはねえが・・・跡が、な」

「そう、ですか。でも、生きてるんですよね?」

「ああ、お前よりかはずっと元気にやってる」


彼の言葉にふと、自分の体を見る。

鍛え上げられていた筋肉はすっかり衰え、着物の隙間から除く肌には骨が浮き出ていた。
何度も拷問にかけられたせいで生傷はそこら彼処にあり、何度も壁を引っ掻いたため両の手の指先は赤黒く変色して爪がはがれている指もあった。

―――もし、Aが今の僕を見たらどう思うだろうか?
きっと泣きながら抱きついて来て「私の心配より自分の心配をして!この大馬鹿兄さん!!」と怒るのか泣くのかどっちかにしろよ、と言いたくなるような反応をするのだろう。


「これじゃあ、僕の方がAに心配かけるかな・・・」

「だろうな」

「・・・あの、土方さん」

「なんだ」

「あいつは、Aは気持ちをため込みやすくて、誰かが支えになってやらないとすぐに崩れてしまうんです。だから、その、気持ちを少しでも吐き出せるように、文のやり取りをさせてほしい」


僕は大罪人だから、外部との交流はできるだけ断った方が良いのだということもわかっている。
・・・でも、僕はAの心の弱さがとても気がかりでならなかった。

しばらくの沈黙の後、土方さんは険しかった表情を和らげて言った。


「・・・文は預かる。あいつに手渡す必要があるかどうかは俺が判断するが、それでもいいな?」

「―――ありがとう、ございます!」






それから、僕らの届くかわからない文通が始まった。

百五十七→←番外:兄妹其ノ三



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設定タグ:薄桜鬼 , 藤堂平助
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いちご牛乳二世(プロフ) - 本当に申し訳ないです!お返事いつでも待っております! (2020年12月7日 4時) (レス) id: 7192c58253 (このIDを非表示/違反報告)
いちご牛乳二世(プロフ) - 私自身あまり裏語薄桜鬼に詳しくないのもありますが岡田似蔵さんが気になりすぎて岡田似蔵さんオチが見たいなと思ってしまいまして…(苦笑) (2020年12月7日 4時) (レス) id: 7192c58253 (このIDを非表示/違反報告)
いちご牛乳二世(プロフ) - 最後まで読ませて頂きました!とても良かったです!今は未だ正式に完結はしていないのでしょうか?していらっしゃらないのであれば唐突なのですが完結致しましたら基本的な設定はそのままのこの話とは別物として岡田似蔵中心の物語が見たいです! (2020年12月7日 4時) (レス) id: 7192c58253 (このIDを非表示/違反報告)
沙夜(プロフ) - まんささん» お久しぶりです(^-^)私も喉風邪ひいてしまって、今は落ち着いたんですけど、一時期熱も出てしまいました(T_T)そうですね、気をつけましょうね(><) (2017年10月14日 17時) (レス) id: e978245002 (このIDを非表示/違反報告)
まんさ(プロフ) - 沙夜さん» またまたお久しぶりです!最近喉風邪をひいてしまいました(汗) お互い体には気を付けていきましょうね(><) (2017年10月14日 17時) (レス) id: 4838eaea5e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まんさ | 作成日時:2017年1月3日 19時

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