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その時、遠くから先輩がこちらに向かって大きく手を振っているのが見える。
「あれ誰?
俺今日裸眼だから見えん」
細い目を睨みつけるようにさらに細くして彼は言った。
その顔がまんまヤンキーで、笑いがこみあげる。
身長ちっちゃいけど、って1人で心の中でツッコミを入れて、さらにツボる。
「…男、か?
あれ、ズボンだよな?な?
え、まってスカートにも見えてきたんだが。
おまえ、何笑ってんの」
『ちょ、まって、その顔ほんとやばい』
「しょうがないじゃない、こうしなきゃ見えないんだから!!!!
笑うんじゃないわよ!!!
もー、うるさいアンタは!!」
『それしんどい、やめてよ!
っあはは、もーしんどい…』
「ねえーえ!
笑い事じゃないってまじで最近視力やべーんだけど」
ひとしきり笑った後、涙を拭う。
『はー、笑った…』
「笑いすぎ…
何アイツ、怒ってるよ」
彼が指さす先には、散々放ったらかしにされていた先輩。
腰に両手をあてて、ご立腹のようだ。
そのあざと可愛いジェスチャーでわかった。
『なんだ、天月くんじゃん』
「…誰それ」
『え、文化祭で歌ってたの知らない?
軽音部のさ、女の子とかまふ先輩がよく言ってんじゃん天月って』
「…ふーん、知らね」
天月くんが私の名前をでかい声で叫んで、周りの目線がこちらに集まる。
「もしもーし、聞こえてますかー!
おーい、2年B組、次期生徒会副会長の___」
痺れを切らしたのかそう叫ぶ天月くんに、血の気が引く。
『ええ、ちょっと!』
全速力で天月くんの元に走った。
「ふむ、ご苦労」
『あ、天月くん、ひどいよ…
なに、なんなの』
「俺卒業だよ?
泣かないの?
大学生なっちゃうよ?
キャンパスライフ楽しんじゃうよ?」
『泣かないよ、家となりじゃん。』
「えー、つれない…」
もうちょっとさあ?!なんかさあ?!あるじゃん?!と叫ぶ天月くんに呆れる。
全く、バカなんじゃないの。
「ねね、あの男の子彼氏?」
天月くんは私の不機嫌そうな顔を見てもにこにこ顔のままで、不躾な質問を投げかけてくる。
『違うよ』
「じゃあ好きぴ?
現在進行形で気になってる感じ??」
『天月くんよりかは好きだよ』
「えー、好きなんだぁー!」
『うん天月くんよりかはね』
「ねね、どの辺が?
ねえねえどの辺にときめいてキュンときたの??」
『さては聞いてないな』
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弥生2nd@夢見月(プロフ) - 結月。さん» 返信遅れて申し訳ございません!!めちゃくちゃ嬉しいです……もしよかったらどんどんリクエストもお願いします! (5月13日 21時) (レス) id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
結月。(プロフ) - 初めまして、弥生様のお話を全て夢中になって読んでおりました…。凄く大好きなお話ばかりで、読んでいてとても幸せになりました;;素敵なお話を書いて下さってありがとうございます。『一般人シリーズ』もこちらの短編小説も大好きです。これから応援しております◎ (2023年5月2日 13時) (レス) id: 5fcf3e0281 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 紫陽花さん» 返信遅くなってすみません!!ぜひ書かせて頂きたいです!素敵な設定をありがとうございます! (2023年1月11日 0時) (レス) @page46 id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - urtさんとsrr先生が話してて、夢主の元カレの浮気(もしくはどこからが浮気なのか)について話してて、それをたまたま聞いた夢主がurtが浮気してる(もしくはしよう)と勘違いしてるシチュを見たいです。 (2022年11月20日 1時) (レス) @page39 id: a2f685055b (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 未夜さん» めっっちゃ嬉しいですありがとうございます………個人的に坂田さんの話は満足の出来だったというかこの話を思いついてから「シリーズにしちゃおう!」となったのでそう言ってくださるとめちゃくちゃ励みになります… (2022年3月19日 0時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生2nd@夢見月 | 作成日時:2020年6月6日 23時