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『いいじゃん、あんたもイケメンなんだし。
どーせ、第二ボタン争奪戦になるよ』
良かったですね、見目がよくて!と負け惜しみのようなセリフを吐く。
「あのなあ、どれだけたくさんの人から好かれたって、自分が好きな人に好かれなきゃ意味ねえんだよ」
お前は馬鹿か、と頭をはたかれる。
その顔が意外と優しい顔で、はたかれた頭も痛みを全然感じない。
どっちかと言うと、少女漫画によくある頭ポンポンみたいな。
あれ、こいつそんな優しい顔できたんだ。
こっちは浦田をバカにしたのに、そんな気を使われた優しい対応をされてはバツが悪い。
『ふうん、案外いいこと言うじゃん』
「案外ってなんだよ、案外って。
ぶっ飛ばすぞ」
やめてくれ。
ボクシング部のぶっ飛ばすはシャレにならん。
振り上げられた拳に反射的に頭を手で抑えたけど、彼は少し呆れた顔をしてすぐに手を下ろした。
「あのなあ、お前、馬鹿か。
殴らねーよ、お前は。」
てっきりいつも坂田くんがやられてるみたいに鉄拳制裁をくらうと身構えてたから、あっけに取られる。
『あ、え、なに、女子には手あげないって?』
「んー、まあ。
うん、それでいいわ、そうだよ」
『いつも殴ってるのに…』
「あのさ、そんなに俺殴ってるイメージある?
もしかして、さっきの痛かった?」
さっきの、というのがあの頭ポンポンということを、5秒遅れて理解する。
心配そうな顔が可哀想に思えたから否定しようとしたのに、彼は私の返事を待たずにワタワタし始めた。
「ごめん、痛かったよな。
ごめん、気つけるわ」
『あ、え、うん。』
「うん、大丈夫か?」
『うん…』
「ん。」
いつもよりちょっと優しい声が私の鼓膜にドストライクで、動揺する。
『いいなぁ、私も青春したい…』
目の前の光景に視線を戻し、わざとらしくそう言う。
自分でも分かるくらい、不自然だった。
「まずは自分のできる努力をしろっての。
それ言うのだいたいなんにも努力してねえやつだから。
大体お前はな、自分の芯ってもんがないんだよ。
そんなんだからお前副会長押し付けられるんだろうが」
いつもの調子に戻って、安心する。
『口わる…そんないいます?』
爪のチェックから髪型のチェックへと移った彼は、かかか、と変な笑い方をする。
きもちわる、と呟けば、聞こえてますよー、とおどけた甘え声で返された。
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弥生2nd@夢見月(プロフ) - 結月。さん» 返信遅れて申し訳ございません!!めちゃくちゃ嬉しいです……もしよかったらどんどんリクエストもお願いします! (5月13日 21時) (レス) id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
結月。(プロフ) - 初めまして、弥生様のお話を全て夢中になって読んでおりました…。凄く大好きなお話ばかりで、読んでいてとても幸せになりました;;素敵なお話を書いて下さってありがとうございます。『一般人シリーズ』もこちらの短編小説も大好きです。これから応援しております◎ (2023年5月2日 13時) (レス) id: 5fcf3e0281 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 紫陽花さん» 返信遅くなってすみません!!ぜひ書かせて頂きたいです!素敵な設定をありがとうございます! (2023年1月11日 0時) (レス) @page46 id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - urtさんとsrr先生が話してて、夢主の元カレの浮気(もしくはどこからが浮気なのか)について話してて、それをたまたま聞いた夢主がurtが浮気してる(もしくはしよう)と勘違いしてるシチュを見たいです。 (2022年11月20日 1時) (レス) @page39 id: a2f685055b (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 未夜さん» めっっちゃ嬉しいですありがとうございます………個人的に坂田さんの話は満足の出来だったというかこの話を思いついてから「シリーズにしちゃおう!」となったのでそう言ってくださるとめちゃくちゃ励みになります… (2022年3月19日 0時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生2nd@夢見月 | 作成日時:2020年6月6日 23時