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声かけるべき? いや、でもなぁ…
頭を抱えてるとちょんちょんと誰かに肩をつつかれる。
「降りる準備せんで大丈夫なん?
この次の駅、学校の最寄り駅やで」
特徴的な関西弁。
視界の隅に見える相変わらずぐちゃぐちゃなネクタイ。
恐る恐る顔を上げ前を見ると目の前には例のあの人。
『!!!!!!』
ずっと考えてた人が目の前にいてもう大パニック。
「え、そんなビビる?
ちょっとショックやわぁ」
にっと笑うとまん丸でくりくりな目が細められる。
うわ、この人すっごい綺麗な顔してる。
何も言えずに黙っていると彼は気まずそうに私のブレザーを指さした。
「その制服、うちの学校のやろ?
やから俺と同じ学校やと思ったねんけど……
あれ、ちゃうかった?」
『あ、や、同じ学校だと思います…』
そう言うと彼は“よかったぁ”と胸を撫で下ろす。
あれ、意外といい人…?
それに、私が見てたことも気づいてないみたい。
「あ、駅ついたで。
そうや、どうせ行くとこ同じなんやから一緒に行けへん?」
そう言ってまた明るく笑う彼に、断る気も失せてしまってうん、と頷く。
電車をおりてごった返すホームを出れば見慣れた通学路。
でも私にはまだ問題が残っている。
ネクタイ……どうしよう。
あとピアスも。
うーん、いつ言おう。
そう思っていると、彼の方から話を切り出してきた。
「あ、そういやなんで俺の事ずっと見てたん?」
『あ、バレてたんだ…』
「おん、普通気づくやろあんな見られてたら」
『あのね、ネクタイが……』
そう言って彼の胸元を指さすと彼はキョトンとした顔で首を傾げた。
「ねくたい?」
まるで初めて聞いた言葉かのように復唱する彼。
『ネクタイ、結べてない。
今日服装チェックだから…それ見られたら怒られるよ』
「げ、今日服装チェックやったん?!?!」
100点満点のリアクションをする彼に思わず笑みがこぼれる。
『そうそう、しかも門番中野先生だからさ』
中野先生は最恐の生活指導として全校生徒に認識されている先生。
私がその名前を口にすると彼はあからさまに嫌な顔をした。
「うええ…俺あの先生キライやねん…
くっそー、こんなことなんやったらセンラに結び方教えて貰っといたら良かったわ…」
坂田くんの話を聞いてみると、どうやら普段はセンラさんという友達にネクタイを結んでもらっているらしく、今日はたまたまその友達が委員会で朝早く登校しているらしい。
センラさん凄いね、ママじゃん。
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弥生2nd@夢見月(プロフ) - 結月。さん» 返信遅れて申し訳ございません!!めちゃくちゃ嬉しいです……もしよかったらどんどんリクエストもお願いします! (5月13日 21時) (レス) id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
結月。(プロフ) - 初めまして、弥生様のお話を全て夢中になって読んでおりました…。凄く大好きなお話ばかりで、読んでいてとても幸せになりました;;素敵なお話を書いて下さってありがとうございます。『一般人シリーズ』もこちらの短編小説も大好きです。これから応援しております◎ (2023年5月2日 13時) (レス) id: 5fcf3e0281 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 紫陽花さん» 返信遅くなってすみません!!ぜひ書かせて頂きたいです!素敵な設定をありがとうございます! (2023年1月11日 0時) (レス) @page46 id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - urtさんとsrr先生が話してて、夢主の元カレの浮気(もしくはどこからが浮気なのか)について話してて、それをたまたま聞いた夢主がurtが浮気してる(もしくはしよう)と勘違いしてるシチュを見たいです。 (2022年11月20日 1時) (レス) @page39 id: a2f685055b (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 未夜さん» めっっちゃ嬉しいですありがとうございます………個人的に坂田さんの話は満足の出来だったというかこの話を思いついてから「シリーズにしちゃおう!」となったのでそう言ってくださるとめちゃくちゃ励みになります… (2022年3月19日 0時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生2nd@夢見月 | 作成日時:2020年6月6日 23時