検索窓
今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:116,354 hit

外伝 【壱】 夏祭り ページ46

「ねぇ、今夜は暇?」
「なんだ!誘っているのか!」

木刀を杏寿郎に向けて振るい、それを軽々と避けながら、低姿勢で懐に入られ、下段から上段に向かって振り上げられる。
木刀は私の頬擦れ擦れを突き、この隙を逃すものかと前に出る。

「似たようなもの……ね!」

重心を前へ移し、そのまま勢いよく、杏寿郎の脳天目掛けて振り下ろす。だが、素早く木刀で弾かれ、後ろに跳び上がり距離を取る。

「Aからの誘いとは珍しい!任務があるが早急に片付けるとしよう!」

前かがみになり、足をバネのようにして距離を詰められ、木刀が手首に振り下ろされる。良くて青紫色の青タンに、悪くて骨にヒビが入るだろう。

「期待して待ってる!」

下手にはでない。上からくる衝撃には、下から攻撃したとて威力が増すだけ。川の流れに逆らう魚よりも、流れに乗る魚の方が速いのと同じ。
上は隕石、下は地面。ならば左右は?
杏寿郎の木刀が私の手首に届く寸前に、必要最低限の動きで避け、そのまま、こちらに勢いよく突っ込んできた杏寿郎の方に振り下ろす。
だがそのとき、腕を掴まれたかと思えば、そのまま強い力で引っ張られた。

「すぐ戻る!」

ほんの数年前の私なら、こんな事は冗談でも言えなかったろうに、今は違う。恥ずかしさもあるし、抵抗も全くないわけじゃない。
けど、悪い気はしない。

「ご武運を」
「うむ!」

抱きしめられたままでいると、ポカンと口を開けてこちらを凝視する千寿郎が目に入った。
見られた……!

「そ、そろそろ離して」
「人目は気にするな!」
「気にするの!」

抵抗も虚しく、結局、杏寿郎が任務に向かう直前まで抱きしめられたままだった。
杏寿郎に解放されてから、町へ向かった。
今夜は年に1度の夏祭り。打ち上げられる花火を見上げながら口付けを交わせば、冷めぬ愛を培うと噂で聞いたのだ。

「熱心ですね」

付き添いで来てもらった千寿郎は、どこか呆れた様子で私の隣を歩いている。

「この町の夏祭りは意外と有名なのよ?今まで気にしたことはなかったけど、普通の夫婦は一緒に花火や出店を見て回るんだって!素敵だと思わない?」
「義姉上が楽しそうで何よりです……」

夏祭りというワードにはしゃぐ義姉に、千寿郎は嫌な予感がした。別に、2人か喧嘩をするのではないかとか、そんなことではない。
彼が心配したのは、無自覚の独占欲を持つ兄の方だった。

外伝【弐】夏祭り→←外伝 【弐】小さくなった夫



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
121人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 女主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。