外伝 【弐】小さくなった夫 ページ45
何事もなかったかのように、いつも通りワハハ!と笑っている夫に、私は頭を抱える。
「せめて自分で服を着てくれればいいのに……」
「え?兄上はご自分で服を着れますよ?」
思わず呟いた言葉に、千寿郎は不思議そうに首をかしげると、お義父様も頷き、口に含んでいた食べ物を味噌汁で流し込んだ。
「風呂も自分で入ってくれるからな。身体が小さくとも大して変わらんらしい。小さい時の杏寿郎はもっと世話が焼けたがな」
昔を懐かしんでいるお義父には申し訳ないが、今はそれどころではない。他にも聞いてみたところ、私に頼りっきりだったことを自分1人でやっていた。
高い所の物を取るときは、呼吸を使って飛び上がったり、歯を磨いたりなどなど。
「杏寿郎?」
今までで1番ドスの効いた声だったと思う。
杏寿郎はこちらを一瞥すらせず、ワハハ!と笑っている。誤魔化す気か。
「表に出なさい!」
「義姉上!落ち着いてください!」
刀を構える私を抑えようと、後ろから引っ張る千寿郎だが、私の怒りは収まらない。今日という今日はその顔に一撃入れてやる!
私の斬撃など軽々と避けながら、刀を振るわれるのもいい!などとぬかしている。
治る気配のない夫婦喧嘩(?)は、お義父様が杏寿郎にゲンコツを食らわれたことでことなきを得た。
「身体が小さくなる薬……?ああ、アレは薬品としてキチンと管理していますよ。まぁ……あまり使う機会がないので、奥の方にしまっていますが」
後々聞いてみた所、しのぶさんの蝶屋敷にある薬は厳重に管理されており、杏寿郎が故意的に薬を飲んだことが発覚した。
「杏寿郎、アンタは何がしたかったの?」
聞いてみても、杏寿郎は答えない。いや、答えたくないのかもしれない。私に隠し事する気?と嘘泣きをしてみれば、杏寿郎が折れた。チョロい。
なんでも、子供の姿なら、私に甘えれやすいと思ったのだそう。前例があるから、それの味をしめたらしい。
まぁ、たしかにご飯を食べさせたりとか、着替えさせたりとか、今の杏寿郎には必要ないしね。
「言ってくれれば、いくらでもしたのに」
アンタのことだから、男の恥だとかで、上手く口にできなかったんでしょ?自分から子供に成りに行く時点で恥も何もないけど。
「もう……夫婦なんだから」
言った後になって、顔が熱くなるのを感じた。
思わず視線を逸らした途端に、そっと口付けされて抱きしめられた。
やっぱり、子供の杏寿郎よりも、今のままの杏寿郎が好きだな。そう思う。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時