弐ノ伍 狂戦士と粉雪 ページ21
ちょっとだけネタバレ有り。
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何故だと、猗窩座は目の前の剣士に奥歯を軋らせる。
実力は見せつけた。人間は鬼には決して勝てない。勝てるはずがないと言うのに、なぜ諦めない。なぜそんなにも弱者を守ろうとする。
「うおおぉぉお!」
皮一枚で頸はまだ繋がっている。だが、少しでも気を緩めれば斬られてしまう。
もう、動いているのが不思議なくらいにズタボロなはずだ。骨が折れ、内臓が傷付き、その痛みは想像を絶しているだろう。
だというのに、なぜ立ち上がる。なぜ折れない。
『_________じさん!』
誰かの声が耳に届いた。知らない女の声だ。
こんな時に幻聴が聞こえるなど、一体どうしたというのか。こんな危機的状況で、そんなことを考える余裕などないというのに。
今思えば、Aの"呼吸"を見た時から、不思議な感覚があった。見たことなどないはずの、夜空に咲く花。妙に耳に残る、雪という言葉。
『お願い、もうやめて!』
知らない女が、俺に泣きながら縋る。
違う、俺はまだ死ねない。もっと強くならなければならないんだ。もっと強く、誰よりも強くならなければならないんだ。
貴女を守るために、俺は強くならなければならないんだ。
「ああぁぁああ!」
「うああぁああ!」
突然頭をフラッシュバックしたのは、かつて己が守ると決めた大切な人。己を導き支えてくれた尊敬する人たち。そして、そんな人たちを守ることもできない、弱く脆く、無力な己の姿。
嗚呼、そうか。俺が本当に求めたものは……。
刀を抑える手の力が緩まる。頭の中で何をやってるんだと、このままでは頸が飛んでしまうぞ、と訴える自分がいる。
それでも、身体はもう言うことを聞かない。
「……ごめん」
きっともう、貴女には会えない。ずっと昔に、貴女を手放してしまった時から、俺の人生は全てが無意味だったんだ。
それでも俺は、それすらも忘れて無様に生きた。何もない、空っぽの、ただ長いだけの時間を。
【雪の呼吸】
そんな猗窩座にトドメをささんと、Aが刀を構える。2本の刀を抑えるので精一杯の猗窩座に、それを止めることはできない。
【伍ノ型
氷に包まれた刃は、水と炎の2本の刀と交じり、猗窩座の頸を刎ねた。だがそこに、苦痛はない。雪のように柔らかな、優しい光があった。
「……ありが、とう」
優しく微笑む光の先で、猗窩座は地獄の業火に焼かれながら、大切な人たちの元へ還った。
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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時