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弐ノ陸 猛炎と赫灼 ページ22

猗窩座の頸が地面に転がると同時に、陸から陽がゆっくりと顔を出し、鬼の身体はチリになって消えてしまった。

「か、勝った……?」

ボロボロの状態で地面にへたり込むAに、錆兎は安心させるように目を細めて、小さく頷く。
その様子に、Aは緊張感から解放されたからか、目から大粒の涙を零し始め、錆兎が宥めるように彼女の肩をさする。

「竈門少年」

傷はどうだ?と、炭治郎の空に座り込む満身創痍の煉獄に、炭治郎は申し訳なさそうに俯く。

「俺は……何も出来ませんでした」
「そうだな。だから君は……君たちはこれからさらに成長する。そしていつか、君たちは鬼殺隊の光になると、俺は信じている」

よくやった、と笑みを浮かべる煉獄に、炭治郎もつられて笑う。
炭治郎、伊之助、善逸、禰豆子の奮闘で、下弦の壱の討伐、及び200人もの乗客は誰1人として欠けることなく、鬼殺隊の医療部隊に保護された。
炎柱の煉獄 杏寿郎。そして階級、甲の鱗滝 錆兎、A A3人の手によって、上弦の参を討伐。
もしも誰か1人でも欠けていれば、上記の何かが変わっていたかもしれない。

「Aさん!」

己を呼ぶ弟弟子に、Aは振り返ると、テクテクと彼の元へ駆け寄る。

「どうしたの?炭治郎」

一瞬だけ聞きづらそうに口を噤んだ炭治郎だが、やがて真っ直ぐに彼女を見据えて、ゆっくりと一言一言丁寧に続ける。

「どうして……型を変えたんですか?」

猗窩座の頸を斬る瞬間、Aは突然伍ノ型に変更したのだ。しかも、それは鬼が自らの頸を差し出した時のみ、鬼に苦痛を与えることなく頸を斬るための慈悲の型。
あの瞬間、猗窩座は自身の頸が斬れることを望んだのだ。

「……なんとなく、あの人が苦しそうだったから」

それは炭治郎も同じく感じていた。頸を斬られる直前に、猗窩座からは隠しきれないほどの悲しい匂いがしていたから。
多くの人を殺してきただろう。多くの人の希望を踏みにじってきただろう。何百何千年経っても、到底償えるはずのない罪を犯してきただろう。
それでも、最期は人間として弔いたい。そう願う心は、罪になるのだろうか。
地獄があるのなら、間違いなく地獄に堕ちる。それでも……。

「アナタは優しいね、炭治郎」

そんなアナタだから、私たちは力を貸したくなるのかな?

小さく呟かれたその言葉を、炭治郎は聞き取れなかった。けれど、彼女からした匂いは、雪のように不香で、けれど優しい匂いがした。そんな気がした。

弐ノ漆 猛炎と設定→←弐ノ伍 狂戦士と粉雪



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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時

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