【東リべ】一般人と称するにはあまりにも目が死んでいる3 (ページ2)

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81話ページ2

「……ぜーいん、死んだ…………」

高いビルの屋上から都会の喧騒を見下ろす人影が1つ。

眼下のビル群と対照的な、光の差さない真っ暗な双眸。

がらんどうの瞳は何も映さない。

死んでしまった。全員。

腐れ縁の彼も、例外なく。

二度と会えない人間に思いを馳せ、その唇はゆっくりと音を出さずに動く。

声には出さない。出せない。

名前を呟いたところで返事をしてくれる相手はもうこの世にいないことを理解しているから。

虚しくなるだけだ。

「可哀想なA。お前にはもう何もねぇな」

テノール声で発せられる悪魔のような囁き。

褐色の肌とパーマのかかった白い髪、彫りの深い端正な顔立ち。

明らかに日本人とはかけ離れた容姿をした男がAに歩み寄る。

花札を模した長いピアスがからりと揺れた。

「お前はオレだけ見てればいいんだよ」

するりと頬に手を滑らせる。

「お前の目、いいなぁ。何も映さない真っ暗な目」

「…………」

アメシストの瞳がAを捉えた。

「三ツ谷隆も、柴八戒も、龍宮寺堅も、松野千冬も、誰も彼も死んだ。お前の居場所は此処しかない」

晒されている白い項に歯を立てれば赤い液体が滴り落ちる。

コンクリートを不気味な赤が彩った。

「さみしい」

真っ暗な双眸が固く閉じられた。