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82話 ページ3

冷たい風が頬を撫でる。

寒さに体がふるりと震えた。

「A」

心地いい声音が自分を呼ぶ。

「ぁ……?」

目を開けて見えたのは日本人離れした容姿と、自分のネックレスと同じデザインのピアス。

褐色肌の男は自分が起きたのを確認すると笑みを浮かべた。

「い、ざな……」

「おはよう。髪、オレと一緒の色にした。髪型も」

お揃いだなと笑うイザナ。

髪をひと房掴んで見てみれば、イザナの言う通り真っ白になっていた。

本来の色が見る影もない。誰が染めたのだろうか……随分手先が器用な御仁と見た。

イザナが顔を近付けるとからりとピアスが鳴った。

自分が付けているネックレスと同じデザインのピアス。

そのピアスに指で触れればイザナはより一層笑みを深めた。

紫の瞳には対照的な無表情で生気のない目を携えた自分が映る。

「ん……」

「いてぇ?」

「んー…………」

「暫く1人で動くなよ。お前はすぐ厄介事に巻き込まれる」

……────。

「それは、イザナからのお願いかい」

「命令っつったらお前は何て言うんだよ?」

「わん、って」

「っふ……!!」

くつくつと笑ったイザナは自分の体を起こすと片手で抱き上げた。

「お」

「随分従順で手間のかかる下僕だな」

「イザナがわざわざ抱えなくても……」

「他の奴が触るくらいならオレ自らやる」

下僕思いのいい王だろ?とイザナは笑う。

「わざわざこんな下僕の為にありがとう」

まずそもそも何故自分がこの男と一緒にいるのか。

それは数週間前にまで遡る。

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作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年11月28日 17時

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