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夏祭りから二週間が過ぎた。
あれ以来及川とは会っていない。
そりゃあそうだ、私たちはただのクラスメイトで、偶然席が隣になった者同士。
いくら及川がしつこいからと言っても、普段は個人的に遊んだりはしない。
友達と呼ぶ程気を許しているわけではないが、けれど知り合いと言う程薄い付き合いでもない。
私たちを繋ぐもの、果たしてそんなものは存在しているのか。
この関係に名前をつけるとしたら、どんな響きになるのだろう。
思い返してみても、何故及川が私を祭りに誘ったのかわからない。何も聞かされていないのだ。
けれどあれ以来、数時間に一度の割合で彼が頭に浮かぶ。
笑った顔、むすっとした顔、ちょっと人を小馬鹿にして得意げにする顔。
一緒に食べたりんご飴。
あの日一緒に見た花火が忘れられない。
そう言えば花火の最中、及川は何か私に言いかけてやめた。あれは一体何を言おうとしてたんだろう。
私を家まで送った別れ際、一度だけ私を呼び止めた。けれど、なんでもないと言ってそのまま帰っていった。
きっと及川は私に何かある。
知りたい、知りたい、知りたい。
それを聞き出せたなら。
『何か聞いてたりするのかな……』
私は徐にスマホを取り出して、連絡先を漁る。
花巻貴大、の文字を見つけてタップした。
"今日少しだけ会えない?"
短く送って返事を待つ。
部活が忙しくて無理かもしれないけど、ここは一応ダメ元で。
暫くすると返信が来て、
"珍しー、いいよ"
と一言だけ。
短文同士のやり取りが心地いい。
多分部活で忙しいのに悪いなぁ、なんて思いつつ、気兼ねなく相談できるのは花巻くらいだから仕方ない。たまには付き合ってもらおう。
私は軽く支度をして、待ち合わせの場所に向かった。
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蜜柑(プロフ) - 卵おにぎりさん» ありがとうございます!最近更新できてなかったので頑張ります…! (2021年8月3日 14時) (レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
卵おにぎり - とても好き! (2021年8月3日 11時) (レス) id: 9fc3fd6c87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2021年5月30日 19時