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.side▶oikawa
「そ、そんなに驚かないでよ。冗談だって!じょうだん!」
『あ、ああ、うん。そうだよね』
やば。俺今、調子乗りすぎたかな?
Aちゃんの反応が微妙すぎて、感情が読み取れない。
けど冗談なんて言って本当は、そうなったらどんなにいいかなぁ、なんて思ってる。
………まぁ、夢のまた夢だけどね。
まずAちゃんに自分の気持ちすら伝えてないんだから、俺は……。
「もうそろそろ着くね……!うわ、人多そう………。Aちゃん人混みとか大丈夫?超今更だけど」
俺は必死に、自分で作ってしまった変な空気を拭い去ろうと話題を変えた。
『まぁ好きではないけど、こういう日は特別だからね、大丈夫だよ。それより及川は目立ちすぎて色んな人に声掛けられそうだね』
「あぁ、まぁ………」
『彼女って勘違いされそうで怖いんだけど』
「………俺は別にいいけどね」
『ん?なんか言った?』
「ううん!なんでもないよ」
放たれた言葉が胸に刺さる。
いつもAちゃんにはあしらわれてきたけど、この時ばかりは堪えた。
俺と恋人って思われるのがそんなに嫌なのか……。
恋人じゃないAちゃん。隣を歩いても、手を繋ぐことすらできない。
一緒にお祭りに来れただけでも舞い上がるほど嬉しかったのに、もう次を求めてる自分。
人は何か一つが上手くいくと、どんどん欲張りになっていくって本当だったんだ。
真隣にいるAちゃんとの埋まらない距離が、もどかしいと感じたときだった。
『はぐれたら面倒だし、腕つかんどいてもいーよね?』
「…………え?」
『探し回るの大変じゃん?』
少し上目遣いで、Aちゃんは俺の左手首をぱっと掴む。
うわ、冷た。なんて言って俺の手首の冷たさに驚く彼女。大丈夫?死んでない?なんて余計な心配(?)までしてきた。
どーみても生きてるでしょ、なんて返した俺の頭は今起きている状況について行けなくて。
Aちゃんと手を触れ合っている、それだけのことが、こんなにも心臓を早鳴らせるなんて知らなかった。
『及川?どした?』
「…………ん?あぁ、なんでもないよ。ちょっと酩酊状態なだけ」
『何言ってんの』
この子は、ほんとにもう………。
その微妙にツンデレみたいな態度で、どんだけ俺の事掻き乱すんだよ。
こっちの気も知らないで、本当に自分勝手な女。
でも、そんな君が好きで好きで仕方ないんだ。
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蜜柑(プロフ) - 卵おにぎりさん» ありがとうございます!最近更新できてなかったので頑張ります…! (2021年8月3日 14時) (レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
卵おにぎり - とても好き! (2021年8月3日 11時) (レス) id: 9fc3fd6c87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2021年5月30日 19時