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彼女達は本当に、あの見張り塔の部屋で暮らしていた。
地上からは塔のねじれで上部が見えず、全体を見るにもかなり距離をとらないといけない。オレがそうしたように、上から来ないと把握できない位置に彼女たちの住処はあった。げきりんの湖やキバ湖の瞳ように、歩いて行けない場所でもないと飛んで移動するトレーナーもいないだろうから、案外いい立地だと思った。
ドラパルトに乗って塔の上から出入りし、木の実や薬草、川の水の採取、たまに弱ったトレーナーを助けたこともあるという。街の中までは入れないから、出入り門の周辺に分かるように置いて行ったとか。
見張り塔の中には小さな書斎じみたものもあって、部屋に籠るときは日がな一日そこの本を読んでいるらしい。間違いなくここの文化財と同じくらい古びている書物の歴史的価値は一旦置いておくとして、ともかく、それが大体の彼女達の生活だった。
「今言えるのはこれくらいかな。現時点では住人の安全はとれているとして、街への保護は一旦なしの様子見。ドラメシヤは、げきりんの湖に返すにしても数が多すぎるんで、これも保留。里親とポケジョブ職に出すのが一番現実的かとカブさんと話しちゃいるが…どうするかは今後の話し合い次第」
「…もしかして最近宝物庫の古ガラル語字引と活用辞典がずっと貸し出し中なのって、」
「そう!あのクソ重い上中下巻、あれがないとろくに話もできないんでな、悪ィけど借りっぱにしてる。フライゴンにはさんざん文句言われてるが」
「本当に喋れるんですねその方…びっくりです。ナックルユニバーシティの言語学でキバナ様以上の成績とる人間なんてそういないんじゃないですか?」
「あの授業は書き物を読むのが専門だからなあ…オレも最初びっくりしたよ。それこそ御伽噺の登場人物かと思ったもんさ。だけど、それ以外は至って普通なの。持ってったサンドイッチはもさもさ食うし、ポケじゃらしあげたらドラメシヤにワンサカ群がられて遊び倒してた」
「急にかわいくなりましたね」
「そう、可愛いらしいんだよなあ、妖精さん」
塔での驚きの出会い以降、オレさまは仕事の合間を縫っては妖精さんこと、Aの元に行っている。と言ってもまだ2回だが。
とりあえず、至って普通のコミュニケーションをとる作戦にした。相手の懐に入るためには、まず自分がオープンにならなきゃ始まらない。ガラル紳士の会話の基本でもある。
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2022年10月1日 21時