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事務書類を渡しに訪れたスパイクタウンで、久しぶりに最深部のライブ会場に足を踏み入れる。ジムリーダーを譲ってからのネズはすっかり音楽活動に主軸を置くようになり、今日も今日とてワンマンライブが開催されていた。薄暗い会場を見回しても現ジムリーダーのマリィはおらず、ライブ終了後に尋ねてみれば、今日は同期達とキャンプで終日不在だという。

こちらで確認しておきますよ、との兄の言葉にそのままファイルを渡し、流れで飲むことになるのは珍しくなかった。

相変わらず寂れた雰囲気の目抜き通りは、反骨の気概を表すような強い色彩のポスターや落書きが所狭しと目立っている。ポケモンリーグから見たこの街の評価はパワースポットの不在もあり決して高くないが、デザインや芸術肌の人間の中には先進を見出している者も多い。お忍びでここを訪れる服飾デザイナーやお偉方も多いとか。それをネズに伝えたところで都会から見た閑古鳥が珍しいだけでしょ、と返されるだけなので言わないが。

先の会議からあまり時間もたっていないので、お互いグラスを進めつつも自然と途中報告のような流れになっていく。


「まだまだマリィの方で年度を遡ってる途中ですがね。現時点で何人か目はつけたけど、そいつらは全員跡を追えたし、問題はなさそうです」

「もう聞き込みまでやってくれてんの?人数減ってるとはいえ結構大変じゃない?」

「スパイクにも何人か知ってる人間がいたんで。それにおれはジムリーダーも引退したしがない歌うたいだからね。それくらいの時間はあるよ」

「またまた、この前もヒットチャート登場したじゃんかネズ様〜。というわけでサインください」

新曲のCDを差し出せば、ため息交じりに受け取られる。面倒くさそうに眉間にしわを寄せているが、それはネズの平常体なので気にしない。


「またお前のところのですか」

「そうそうレナ。この間のライブも行ったって。サインもそん時貰うつもりだったんだけど、ちょうどジムでトラブルがあって終演すぐでとんぼ返りさせちゃったのよ」

「はあ。厳しい上司にふりまわされる、かわいそうなきみ、レナへ。…はいどうぞ」


ありがと、と受け取って大切に鞄にしまう。目に見えては落ち込んでいる姿は見せなかったが、彼女がどれだけライブの日を心待ちにしていたかはジムの全員が知っている。これくらいの詫びで許してもらうとしよう。

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設定タグ:キバナ , ポケモン剣盾 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/  
作成日時:2022年10月1日 21時

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