第42話 ページ42
side アリス
私がもうちょっと頭の回転が早かったら、もっと気の利いた事を言えただろうか。
せめて寝起きじゃなければ、こんなパニックにならなかっただろうか。
そんなたらればが頭の中をぐるぐる回る。こんなことを考えるより、それこそ今言いたいことを考えた方が断然合理的だろうに、今の私にはそれ程の余裕がなかった。
「……どうした？」
『あっ、いや、あの……』
緊張して呼び捨てタメ口なんかできやしない。ナックルズさんは不思議そうに首を傾げて怪訝な顔でこちらを見ている。ああまずい。このままじゃ変な人扱いされて終わりになってしまう。
ふと、ナックルズさんの後方の木から見え隠れする青い影が目に入る。小さな体躯に似合わない大きなトゲのような毛並み。間違いない。
(ソニック……！)
危うく口に出しそうになったのを堪え、心の中に留めておく。ソニックはやっと顔をひょっこりと出したかと思えば、ニヤニヤとした笑みを浮かべてこちらを伺っている。察した。アレは面白がってる。からかわれてる。思わず顔を顰めてしまった。
「どうしたんだ、後ろに何か居るのか？」
『わ─────！ 居ません、何も居ませんよ！』
痺れを切らしたナックルズさんが振り返る。しかし俊敏なソニックはすぐに木陰に隠れて回避。私は安堵の息をつくが、ナックルズさんは気配を感じるのかまだそちらを向いたまま。私は緊張で冷や汗を垂らす。忙しい。
「……いや、何かいるな」
『えっ』
「待ってろ。確認してくる」
歩き出したナックルズさんに、私の脳内でエマージェンシーが発令した。絶句する私に背を向け、ゆっくりとソニックの方へ近づいて行く。一見何の変哲もない木陰だが、その後ろに隠れているソニックが焦っているのが簡単に予想できる。ここで見つかってまた乱闘、なんてことになったら。
『ま、待って！』
そう考えたのもつかの間、私の両手はいつの間にか咄嗟にナックルズさんの大きな手を掴んでいた。驚いた表情で彼は振り返り、立ち止まる。
こうなったらもう、後戻りはできない。
「……な、何だよ？」
『……私、』
視界の端ではソニックが音を立てないようにゆっくりと顔を半分出し、頑張れ、の意なのか、お決まりのサムズアップなんか出してみたりして。懲りてないなぁ、とリラックスした私は一呼吸置くと、目の前のナックルズさんを見つめて口を開いた。
『私、あなたにお礼を言いたいんです』
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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