第43話 ページ43
『れ、礼だと？』
ナックルズは鮮やかな海色の瞳に飲まれたように動けないまま、アリスの言葉に耳を傾けた。
『あの時、もうダメかと思ってました。私は動けなくなって、エリザも怪我して、非常階段もすぐに崩れそうで。ここで2人で死んじゃうのかなって。そう思ってました』
アリスは言葉を紡ぐうちに視線を下げる。トゲのついた手袋に包まれたナックルズの大きな手は、アリスの小さな手に包まれている。ぎゅっと握る力を強められると、ナックルズの頬は熱くなった。
『でも、あなたのお陰で助かりました。 あの時私達を見つけてくれて、助けてくれて……本当にありがとう』
アリスが感謝の言葉と一緒に笑顔を浮かべた瞬間、花びらがそよ風に乗って舞い上がる。それは単なる偶然か、それとも。
どっちにしろあまりにも美しいその光景に、ナックルズは言葉を失い呆然としてアリスだけを目に映していた。
『本当は、あの時にちゃんと言うべきだったんですけどね。私も慌ててたし、貴方も急いでたようだったから……ナックルズさん？』
「ハッ！？な、何だよ！？」
呼びかけにやっと現実に引き戻され、文字通り動揺するナックルズ。真っ赤な頬の彼に、つい先程まで彼と同じく頬を赤くして何も言えずにいたアリスは首を傾げる。
「きっ、聞いてるって！れ、礼なんか要らねぇよ」
『そんな。ナックルズさんは命の恩人なんですよ』
「恩人って……お前っ、手っ、いつまで握ってんだ！！」
『えっ、ごめんなさい！嫌でした……？』
ずっと握られたままの手をやっと視界に収めたかと思うと、とうとう顔から湯気を出し、パニックを起こしたかのようにブンブンと振り払ったナックルズ。アリスは内心ショックを受けるが、彼の必死の否定を聞き安堵する。
「そうじゃねぇ！と、とにかく恩人なんて堅苦しい肩書きやめろ。あと敬語もさん付けも要らねえ」
『え、いいんですか？』
「寧ろ止めろ。使われるのに慣れてねぇんだ」
『慣れてない……。本当だ、エミーの言っていた通り！』
「……エミー？」
「じゃーん！エミー･ローズ、華麗に登場〜！」
そこまで言うと、ガサガサと茂みからピンク、黄色、青、とゾロゾロと出てくる。遅れてクリスも出てきた。ずっと彼を尾行し、一部始終を見ていたらしい。
「Hey,ナッコゥ！ 言った通りだろ？」
ウインクを決めてみせるソニックに、嬉しそうなアリス。ナックルズはまだ頬に赤を残したままぐうの音も出ないのだった。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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