佰陸話 月なんて少しも見えない夜 ページ8
竈門君達3人は、揃いも揃って肋を折っていたらしい。当然治るまで任務には行けずここも出られないので、私もこの藤の家に留まる事を余儀なくされていた。
ただ私は無傷だから任務には普通に行けるし行かないとマズイ。竈門兄妹を見張るのが今の私の主な任務だが、我妻君と嘴平君が居れば被害は出ないだろう。
通常通りに一般隊士が苦戦している鬼を倒しに行き、藤の家に戻ったら私の部屋の前で竈門君が箱を持ち立っていた。
「あ、A帰ってきたのか。任務に行ってたのか?」
「うん。私は君達と違ってどこも怪我してないからね」
応えながら部屋の襖を開ける。私と話す為に彼が待っていたというのは一目瞭然なので、竈門君も部屋に促した。
「それで、どうしたの? 私に話す事があるんでしょ」
私が訊くと、竈門君は覚悟を決めた様な表情をして木箱を自分の横に置いた。そして口を開く。
「もう善逸と伊之助には話したんだが……Aにも話した方が良いと思って。この木箱の中身なんだが」
「ああ、その事。知ってるよ、鬼が入ってるんでしょ?」
言えば、竈門君は何で知ってるんだと言わんばかりに目を見開いた。
お館様に聞いたから……なんて言えないしなぁ。
「私、人より気配に敏感なの。当然鬼と他の生き物の区別くらいつけられる。最初に会った時から分かってたよ、鬼が入ってるって」
「そうだったのか……」
何一つ嘘は言っていない。隠してはいるけれど。
それで、と首を傾げた。私は知っているけれど、知らない人からしたら当然疑問に思うであろう事を質問する。
「何で鬼を連れてるの?」
「……俺の妹なんだ。2年前に鬼にされて、でも1人も人は食べてない。俺は妹を人間に戻す為に鬼殺隊に入ったんだ」
「ふぅん」
鬼を人間に戻す、ねぇ……そんな事可能なんだろうか。
聞いた事無いけど、何て考えていると、竈門君は不思議そうな顔をした。
「Aは言わないんだな。鬼殺隊なのに鬼を連れてるなんて! みたいなの」
「我妻君か嘴平君に言われたの?」
「いや。でも普通なら言うだろ? それにA、鬼の事凄く嫌いみたいだし」
……素直に驚いた。私が鬼を大嫌いな事を、竈門君が知っていた事に。
「まあ、当たり前だよね」
私は竈門君に笑顔を向けた。
「家族も親友も鬼に殺されて、嫌いにならない人居ないでしょ?」
竈門君は何か言いたそうだったけれど、黙っていた。
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ゆず(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます! 佳境に差し掛かっている掛け持ち作品がありペースは落ちていますが、そちらが終わり次第速くなると思います。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 面白く、一気に読ませていだきました!更新がとても楽しみです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: bc9653ee41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2021年1月1日 14時