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真選組動乱篇/理解者 ページ7

「武士にとって、最大の不幸は何だと思う?」




縁側に座って寄って来る猫に餌をやりながら、伊東は自分に従う隊士に言った。




「それは、理解されない事さ。いくら才能を持ち合わせていようと、いくら努力していようと、それを理解されない。それに見合うだけの評価をされない。器に見合うだけのエサがもらえない。これ程の不幸はない」




枯草色の彼は、憂う様に溜息をつく。




「趙の李牧しかり、南宋の岳飛しかり。愚鈍な君主に仕えその才と共に消えていった名将達の、何と多い事か。僕もまた長く、真の理解者を得なかった」




歴史に残る人物と自分を同列に並べるところからも、彼の自分に対する自信が窺える。


しかし彼は、自慢ではなく、淡々と自分にとっての事実を述べていた。




「学問所で神童とうたわれていた時も、名門北斗流で皆伝を得、塾頭に任じられた時も。ついには時流に乗り、攘夷の徒とさえ交わった。だが、どこへ行こうとも僕の器が満たされる事はなかった」




そこまで言って、伊東は嘲笑する様な笑みを浮かべる。




「……それが、まさかこんな所で出会えるとは。あの男だけが、僕を知っている。土方(あのおとこ)こそ、僕の最大の理解者だ」




その最大の理解者は、伊東の策略によって真選組から姿を消したけれど。




「あの男はしっている。僕が真選組におさまる器ではないことを。僕が近藤如きの下で終わる男ではないことを……僕の渇きを、あの男だけがしっている」




伊東の膝の上から、猫が飛び降りる。




「僕の最大の不幸は、最大の理解者が敵だったということさ。まァ、いい。理解できる者がいないなら、自ら認めさせるまで。最も危険な土方(おとこ)は消えた。あとは……」




伊東はゆらりと立ち上がると、こう言った。




「近藤勲を暗殺し、真選組を我がものにする」




それが伊東の目的だった。


そしてそれを聞いていた者が、1人。




(あの男……やはり副長の言う通り……)




山崎は、戸の隙間から彼らを窺う。




(しらせなければ。副長に……早く副長にしらせなけ、)




枯草色の彼の瞳と、目が合った。

真選組動乱篇/頼み→←真選組動乱篇/村麻紗



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(プロフ) - なるほどです!ありがとうございます! (2019年12月17日 18時) (レス) id: d4e761c72f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 哀さん» すみません! 次巻は用意をしただけで、まだ1ページも書けていないんです。でき次第すぐに公開します (2019年12月17日 16時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
アスミ - パスワード教えて欲しいです! (2019年12月17日 15時) (レス) id: 41e9138099 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして!とても面白かったです!次の作品も読んで見たいのでパスワードを教えて頂けると嬉しいです! (2019年12月16日 16時) (レス) id: d4e761c72f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - %さん» 結構長いのに、2日で読んで下さるなんて…! とても嬉しいです。頑張ります! (2019年12月15日 22時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年11月29日 17時

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