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〇捌〇 ページ9

昂然と胸を張り瞳を爛々と輝かせて、彼は名を名乗った。荒々しく、扇情的なその声に合わせて、黒いナニカが彼の周囲で渦を描いて踊りだした。

まるで、彼を護るように。彼に操られるように。

さっき感じた底知れない恐怖心が、瞬く間に膨らんでいく。

名前などではない。此奴は、一体何者なのだ。

「では、その『マギ』様が後宮に何の御用事で。」

「はぁ〜!?んなの、お前を探しに来たに決まってんだろ!」

大きな身振りで露月に抗議の声を上げる。黒いナニカも彼の動きに合わせて縦横無尽に動き回る。

ビィイイ!ビッィィィイッ!!

耳障りな遠吠えもやむことがなく、露月に敵意を向けているようにすら思えてきた。だがやはり先程の言葉遣いといい、その身の内に飼っている黒いナニカといい、細かな躾の行き届いた皇子ではないことは明らかだ。

皇子ではない男子が、何故【後宮】に居る。


「銀色の髪に、俺と同じ目。
お前が露月だろ?」


早鐘を打っていた心臓が、止まった。

ほんの一瞬ではあったが、己ですら記憶に薄い名前が目の前の少年の口から紡ぎ出されたことに言い様のない恐ろしさを覚えたのだ。


視線が交差した。愉快そうにこちらを見つめる、赤い、瞳。



────同じ目。



露月は、やっと気が付いた。
ジュダルと名乗ったその少年も自分と同じ赤眼を携えている。

ただひとつ違うのは、ジュダルの瞳はひどく歪な色をしていることだ。

薔薇の花のような赤だと言われれば、そうとも見れる。
口紅のような赤だと言われれば、そうとも見れる。
血のような赤だと言われれば、そうとも見れる。

いくつもの赤をぐちゃぐちゃに掻き混ぜて、仕上げに黒を一滴。




「私に、何の御用でしょうか。」




歪な赤が、にっこりと、弓なりに歪んだ。

〇玖〇→←〇漆〇



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√ルート(プロフ) - 亜純さん» コメントありがとうございます!私の文章力が拙いせいでお待たせしてしまい申し訳ありません。こだわりが強すぎてどうも筆が進まなくて.....不定期更新は続きますが、少しでも皆様も期待に添えるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!! (2018年7月31日 12時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年7月31日 0時) (レス) id: 430739def7 (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 返信が遅くなってしまい、誠に失礼致しました。まだまだ稚拙な文章しか書けない私には、勿体無いご感想です。本当にありがとうございます!!主人公の美しい一面も、裏を覗けば苦悩や窮愁に埋め尽くされている。主人公の濃密な人生を、皆様に楽しんで頂ければ幸いです。 (2018年5月27日 16時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - 一語一句が本当に綺麗で、琴線に触れるものがある文章ですね。主人公の凛とした美しさに儚さを感じます。これから後宮でどんな活躍を見せるのか楽しみです。応援しております(^^) (2018年5月26日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 麻侑さん» ありがとうございますっっ!比喩表現には特にこだわっているので、褒めていただけて嬉しいです!!嬉しすぎて変な笑いが込み上げてきそう(クエヘヘヘヘヘッヘ←不定期更新ですが見守って頂けると有難いです。 (2018年5月19日 10時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:√ルート | 作成日時:2018年5月18日 0時

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