〇玖〇 ページ10
「俺は『マギ』だ。
ルフに愛されし、偉大なる魔法使い.....ジュダル様だ!!」
………。
露月としては「何の御用事ですか」と尋ねたつもりだったのだが、返ってきたのは荒唐無稽な語り草。子供らしい舌っ足らずな口調に、変な肩透かしを食らった気分だ。
『マギ』だの『ルフ』だの、聞き馴染みのない彼の言葉は露月の脳髄を掻き回す。子供の
────彼が、魔法使い…。
偏った知識しか持ち合わせていない露月にも、その存在は想像するにたやすい。
妖術や幻術を用いて、人類に禍福を降ろすとされる者たち。
人智では図ることのできないその能力は人々の妄想を掻き立て、今なお寝物語として語り継がれている。民話や神話にも度々登場するというが、印象は決して明るくない。
ヒトを欺く、悪魔の手先。
にも関わらず、自らを魔法使いだと語る少年は会心の笑みで露月の返答を待っている。
ひゅうるるる。
この場面にはそぐわない冴えた風が、露月の背後からふわりと通り抜けた。
「そろそろ単刀直入に仰って下さい。ジュダル様。」
皮肉にも、淵明らの手酷い仕打ちが彼女に最善策を探り当てる技量をもたらしたようだ。
────もう逃げられない。
ジュダルを射程に収めた露月の恰好には、瞳や唇のひとつひとつに決意した人間が見せる、妙な冷淡さがあった。
黒いナニカが支配している空気は暗鬱に沈んでいる。
それでも。美しい輝きが迸る露月の瞳が、歪な赤を捉えている。
「お前は……」
低く、低くこだましたジュダルの声は、地を這いながら露月へ近付き、体を突き抜け、血液ごと凍らせた。表情だけは年相応に快活そうだったジュダルから、一切の笑みと、唯一人間らしかった瞳の眼光が消え去る。
「運命を恨むか。」
告げられた一言は、この世に生を受けて、六,七年の幼子が言うには、厳しく、恐ろしく、残酷すぎた。
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√ルート(プロフ) - 亜純さん» コメントありがとうございます!私の文章力が拙いせいでお待たせしてしまい申し訳ありません。こだわりが強すぎてどうも筆が進まなくて.....不定期更新は続きますが、少しでも皆様も期待に添えるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!! (2018年7月31日 12時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年7月31日 0時) (レス) id: 430739def7 (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 返信が遅くなってしまい、誠に失礼致しました。まだまだ稚拙な文章しか書けない私には、勿体無いご感想です。本当にありがとうございます!!主人公の美しい一面も、裏を覗けば苦悩や窮愁に埋め尽くされている。主人公の濃密な人生を、皆様に楽しんで頂ければ幸いです。 (2018年5月27日 16時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - 一語一句が本当に綺麗で、琴線に触れるものがある文章ですね。主人公の凛とした美しさに儚さを感じます。これから後宮でどんな活躍を見せるのか楽しみです。応援しております(^^) (2018年5月26日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 麻侑さん» ありがとうございますっっ!比喩表現には特にこだわっているので、褒めていただけて嬉しいです!!嬉しすぎて変な笑いが込み上げてきそう(クエヘヘヘヘヘッヘ←不定期更新ですが見守って頂けると有難いです。 (2018年5月19日 10時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:√ルート | 作成日時:2018年5月18日 0時