かみさまはいなくなった。3【あんスタ】

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　日付を見ると、千秋が深海家に来ていた時がちょうど【七夕祭】の直前あたりだ。【ハロウィンパーティー】の頃は、奏汰は家にいなかった記憶がある。そうでなくとも彼が帰ってこない日はしばしばあったが、まとまった期間在宅していなかったのは珍しいことだった。
　そして、直近に迫っているイベントが【ショコラフェス】だという。こちらに関しては、今しも企画進行中であることもあってか、【ショコラフェス】に参加する意向を記したメモのみがあった。

　「そういえば友チョコくれるって奏汰さん……」

　バレンタインという行事は知識として知っている。日本の某製菓会社が、外国から輸入してきた聖ヴァレンタインの日にちなんで、女の子は好きな人にチョコをあげましょうという文化を作った、それが日本での一般的なバレンタインだ。最近は、好きな人相手でなくとも、友達同士で友チョコと称して渡しあうこともあるし、義理チョコと称して同級生に配る人、或いは海外においては男性から女性へ贈り物をするのが主流であることに基づいて、男性から何かをあげることもあるらしい。そもそも、大切な人に心のこもった何かを贈るのが基本なのである訳で、愛に女も男もないのだ。

　「なぁんて。愛を私が語るのはお門違いか」

　何せ、全体の幸福のために全体への平等な不幸を望むような人間である。
　手作りを渡す人が多いらしいが、自分は無難に既製品だな、とAは思う。包丁もピーラーも持ったことがなくて、何なら冷蔵庫や電子レンジ、オーブンなども本では見たが実物は見たことのないという人間である。この状態でキッチンに入って、1週間から2週間で手作りお菓子を作れるようになるというプランは無理がある。
　高校入学に備えて購入したノートPC――ノートというには大きい。スペックを重視した結果、ギリギリ持ち運べるくらいではあるものの、ノートPCとは言い難い1kgほどという重量である――をぱかりと開き、Aはチョコレート菓子を検索した。
　甘ったるくないもの。而して甘いもの。

　「何だろこれ、オレンジピール？」

　ダークチョコにあわせることで、互いに香りを引き立てあい、甘酸っぱい香りと苦めの味で大人びた風味に仕上がっているという。
　奏汰らしいものではないし、奏汰に合いそうとも思わないし、奏汰の口に合うとも思わないが、自分用に買ってもいいかなという気はする。

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