037.変化 ページ37
.
「倉持と御幸いるー？」
3Bの教室の扉を開けると、そこには相変わらずぼっち同士で固まっている彼らがいた。受験モードでピリピリしている雰囲気の中でも、二人はいつものように口論していた。
といっても倉持が一方的にキレてるだけだけど。
私は苦笑いしながらゆっくりと近づいていく。
「ほんとに二人仲良いね」
「あ？誰がこんなメガネと！」
「んで、葉月は何の用だよ」
肩下まで伸びた髪の毛先を指にくるくると巻きつけながら「倉持達は野球部のクリスマス会に参加するのかなーって思って」と要件を手短に伝える。
二人は顔を見合わせて「…あー」と気の抜けた声を出す。
「ん、まあ合宿に顔出すついでに行くわ」
「そ。御幸は？」
「じゃー俺も行くかな」
「おっけー。二人が行くなら私も行こーっと」
話はそれだけなので「じゃあね」と手を振り、3Bの教室を後にする。
季節は進み、寒さに包まれた冬。
振られた当初は気まずかった私と御幸も、同じクラスだった頃のように気軽に話せるようになった。
ただ、ぽっかりと胸に穴が空いた感じはする。
結局は時間がすべてを解決してくれるんだ。御幸への気持ちが完全に消えるまできっともう少し。
私はこの短期間ですごく成績が上がった。人生で一番勉強に熱中してると思う。そりゃもう両親に勉強のしすぎで倒れるんじゃないかと心配されるくらいには。
御幸のことを考えていた時間が、勉強に打ち込む時間に変わって。
そして三日に一度くらいのペースで成宮と電話をするようになった。受験勉強の邪魔をしないようにと10分くらいの短い時間の電話。
お互いの学校の話をしたり、成宮の将来の夢の話を聞いたり、野球部時代の話をしたり。時には受験に不安を抱えている私を成宮が励ましてくれたりもした。
いつからか、
成宮からかかってくる電話を心待ちにしている自分に気づいて。
「……え？私の家？」
「勉強の邪魔はしねーからさ、お願い！」
その夜、成宮から電話がかかってきた。
要件をまとめると「お家デートがしたい」とのこと。
「俺は隅っこで大人しく漫画読んだりゲームしたりするから」
「でもそれじゃあ成宮つまんないでしょ？」
「俺は葉月と一緒にいられるだけで十分だよ」
どストレートな甘い言葉に、胸がキュンとする。
時間が進む。
私が御幸を忘れる日は、そう遠くないのかもしれない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 204人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ましゅまろーず(プロフ) - ホイップクリームさん» 一途な成宮くんとか良いですよね…！私も書きながらなんで夢主は中学時代に成宮くんに惚れなかったのかと疑問に思ってたりします笑← オチは両方…書くか書かないかハーフアンドハーフって感じです！笑 ファンなんて言ってもらえて嬉しいです(*´-`)ありがとうございます (2017年8月10日 21時) (
レス) id: d2f5e755bd (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - いつも2人のかっこよさを引き出して下さりありがとうございます！この話でましゅまろーずさんのファンになりました！これからも楽しみにしてます！ (2017年8月10日 19時) (レス) id: a6d986faa9 (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - 鳴くんの主人公を思う気持ちに感動しました…（泣）今まで読んだ話の中で一番好きな作品です！ それと…オチ2人書いてくださるかもしれないというのは本当でしょうか!?コメ見つけた時嬉しくて飛び上がってしまいました!!書いてくださる時は宜しくお願いします！ (2017年8月10日 19時) (レス) id: a6d986faa9 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 真紘さん» ありがとうございます！ワンピースの方もダイヤの方も見てくださり本当に本当に嬉しいです…！ダイヤファンが増えましたか(笑) ばつこいはとくに設定を練ってる作品なのでそう言ってもらえて光栄です(*´-`) これからもよろしくお願いします！ (2017年8月6日 21時) (レス) id: d2f5e755bd (このIDを非表示/違反報告)
真紘 - コメント失礼します。ましゅまろーずさんの作品は内容が深くとてもおもしろいです。僕はONE PIECEから来ましたがましゅまろーずさんのおかげでダイヤのAがすきになりました。ダイヤではとくにばつこいが一番好きです。これからも頑張ってください。長文失礼しました。 (2017年8月5日 14時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ましゅまろーず | 作成日時：2017年4月1日 20時
