【◇】ばつこい

004.悩み事 ページ4

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まだ誰も帰ってこない家で、自分の部屋のベッドに寝転がって棒アイスを食べる。


甘くて、冷たくて、
なんか御幸みたいだと思ってしまう私は、
相当頭がおかしいんじゃないか。



青春の全てを懸けた高校野球は終わり、新しい秋がくる。野球のない、秋が。

ようやく一息つけると思っていたところで、野球じゃなく今度は御幸のことで頭がいっぱいになってしまうなんて。




御幸は私のこと好きなのかな、好きじゃないのかな。そんなことを考えているとアイスを食べきってしまい、棒をゴミ箱に捨てて寝返りを打って目を瞑る。

意識が飛びかけたところを呼び覚ますように、机に置いたスマホが震えた。


……誰？

着信名も見ずにスマホに耳を当てる。





「葉月、久し振りー」

「……成宮？」

「そそ、葉月がそろそろ俺を恋しがってるときかなーって思って電話してみた」

「別に恋しくないし」





なんだ、成宮か。

「今何してる？」と聞かれて、「アイス食べてた」と答えれば「なにそれ羨ましいんだけど！」と成宮の少し高い声が聞こえて思わずふふっと笑ってしまった。

そういえば、成宮はアイスが好きなんだった。





「成宮って悩み事とかなさそうだよね」

「は？超失礼。俺だって悩みくらいありますー」

「例えば？」





悩みがあると言い張った成宮に深く追求してみれば、スマホ越しに流れた沈黙。





「ほら、ないんじゃん」

「あ、あるし！えっと、ほら……」





好きな子のこととか。

声だけでも成宮の照れたような顔が浮かんで、頭を撫でてあげたくなった。


…そっか。成宮もいたんだ、好きな人。





「成宮なら大丈夫でしょ」

「そーでもないよ？俺のことなんてちっとも見てくんねぇし」

「まじか。強敵だね」

「はは、そーそー。強敵」





成宮の恋話をもっと聞きたくなって、さらに質問を重ねてみたが、「葉月はどーなの？」と話を逸らされて。





「一也とは順調？」

「……んー、どうだろ」





御幸のほんとの気持ちってどこからなら見えるんだろう。隣にいても、手を繋いでいても、透明な壁に邪魔される。





「夏祭りに行く約束はしたんだけどね」

「なんだ順調なんじゃん」





拍子抜けしたような成宮に小さく苦笑する。





「……御幸が私のこと好きなのか、自信がなくて」





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