【◇】Bitter Home

009.賭け ページ9

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成宮


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休憩に入り練習場の隅でドリンクを飲んでいると、バッテリーを組んでる一也が絡んできた。





「鳴、なんかお前今日コントロール悪くね？」

「…………やっばり？」

「ああ。こんなんじゃ二軍に落とされるぞ」





はっはっはっと笑いながら毒を吐く一也は、今日も変わらず性格が悪い。


コントロールが悪いって？
そんなのわざわざ言われなくても、本人が一番わかってるっつの。

理由はまああいつのこと。





「実はさ…ここだけの話なんだけど」

「ん？」

「同居人ができたんだよ」

「彼女できたのか」

「違う。住む家ないから住ませてくれって頼まれたの！」





綾瀬が元稲実マネージャーだったこと、
そんな彼女とはおれがOBとして練習を見に行った時に知り合ったこと、

そんなことまで事細かく話し、昨日今日で胸に集まったもやもやを全て吐き出した。


おれの話を聞いた一也は眼鏡の奥の眼をキラリと楽しそうに光らせて「お前、そのAちゃんって子に惚れるんじゃねーの？」とにやにやして肩を押された。





「はあ！？ねーよ！！綾瀬だけは絶対にない！」

「鳴は案外単純だからなー。一緒にいる時間が長い女にコロッと落ちそうだけど」

「単純じゃねーし。あいつには惚れない自信ある。なんなら賭けてみる？」





冗談だったのに一也は「よし乗った」とすぐに食いついてきて、賭けの内容を考えているのか顎に手を当てて俯く。

その姿がやけに似合う一也はやっばりイケメンだったらしい。や、おれの方がかっこいいけど。





「んじゃ、賭けに負けた方が一週間分の飲み代を奢るってのはどうだ」

「一週間？その週は毎日二人で飲みに行くってこと？」

「まあ、そういうことだな」

「いーよ、後悔すんなよ一也」

「お前の方こそな、鳴」





この賭けが成立した時点で勝者はもう既に目に見えてる。それはおれ。

一也には悪いけど、思い切り飲んでやろうっと。





「……で。期限は？」

「そうだな……一年くらいか」

「は、長くね？一年なんて__」

「あーそっか自信ない？一年もあったらやっぱ惚れるか。じゃあ一ヶ月でも」





鼻で笑ってそこまで言いかけた一也を遮って「いいし！！一年で受けてたとうじゃん！十年でも百年でも惚れねーし」と詰め寄る。


こうして今時中学生でもしない子供じみた賭けをすることになった。





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