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「…あ、」
「ん?おーAちゃん」
「御幸さん!この前はお世話になりました」
学校帰りに夕飯の買い物がてら、いつもは降りない駅で降りて街を散策していると、プライベートの御幸さんと遭遇した。
私は片手を上げた御幸さんにペコッと軽く頭を下げる。
「大学帰り?」
「はい。御幸さんは練習してたんですか」
「そう。オフだから自主トレだけど」
「熱心ですね」と笑うと、白い息が冬の冷たい空気に溶けた。さっとマフラーを上げる。
陽が落ちるのが早くなって、まだ5時半過ぎなのに辺りは真っ暗。
「鳴さ、元カノと復縁したの?」
ふと思い出したように呟く。
御幸さんとはそのこと話してるんだ。
私が返事をする前に御幸さんは「なんか最近ぼーっとしてることが多かったけど、今日は集中できてたから」と若干早口でつづけた。
「復縁……かはわからないですけど、けじめをつけるとは言ってました」
「けじめ、か」
「あ、御幸さん、成宮さんの好きなお酒の種類って知ってます?」
「買うの?」
「はい。もし成宮さんが玉砕したら慰めるって約束したんで、飲んでもらおうと思って」
くいっとお酒を飲む動作をする。
御幸さんは、はっはっはっ!と笑って、「良い性格してんな」と私の肩をポンポン叩いた。
背中を押すだけ押して、本当は結果なんて目に見えてる。
それでも成宮さんは前に進もうとして、過去の自分に別れを告げようとして。
そんな姿は世界を沸かすどんなメジャーリーガーよりもかっこいい。
止まったままの時計の針は、動かそうとしないと動かない。
……私は?
止まったままで、いいのかな。
いいわけないよね。歩き出さなきゃ。
御幸さんに成宮さんの好きなお酒の種類の名前を書いたメモをもらって、御幸さんとは別れる。
私は立ち止まってスマホを起動する。
____「今度会いに行ってもいい?」
私からメッセージを送るのは久しぶりだった。
前に進みたい。成宮さんに置いていかれたくない。背中を見ていたい。
スーハーと深呼吸をしてから、震える指で俊平くんにメッセージを送信した。
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ましゅまろーず(プロフ) - 夏乃実さん» 成宮くんと元カノさんの区切りがやっとついたので、成宮くんには夢主さんとのデートを楽しんでもらってます笑 いえいえ、そんな私なんてまだまだです…!ありがとうございます( ´ ▽ ` ) (2017年3月27日 8時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - 初コメ失礼します!!毎回毎回ドキドキしながら読ませてもらってます。鳴ちゃん書くのがとっても上手くて尊敬します!更新頑張ってください^^* (2017年3月26日 23時) (レス) id: 926ac8ac50 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - *.-+樺虹+-.*さん» いえもう本当に私の理想の成宮くんを書いているだけなので…!笑 イケメンさを表現できているなら安心しました笑 樺虹さんありがとうございます!更新頑張ります♪( ´▽`) (2017年3月23日 22時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
*.-+樺虹+-.*(プロフ) - 突然コメント失礼します!もう鳴がイケメン過ぎてやばいです!! 占ツクから通知来ると、bitterhomeかな??って思うほど楽しみにしてます!!これからも頑張ってください!! (2017年3月23日 18時) (レス) id: 7b9748159c (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 胡美さん» 御幸くんはここでは成宮くんの友人ポジションという、キューピッド役になると思います笑 作者が真田くん好きなので出してみました! ありがとうございます^_^ (2017年3月20日 15時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年3月2日 18時