030.俺達だけ ページ30
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成宮
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綾瀬に感化されたのか、
消さなきゃと思っていた気持ちを改めてぶつけてみたくなった。
当たって砕けろってやつだ。
結果は目に見えている。ノーアウト満塁の状態でインコースが得意なバッターにインコースのストレートを投げてスタンドまで運ばれてしまったのと同じように。
いつものようにソファで綾瀬と隣り合って座ってテレビを見ている。
すっと彼女の髪に手を伸ばすけど、以前の時のように後ずされることはなくなった。それだけいつの間にか心を開いてもらったってことなのかな。
お風呂上がりでまだ微かに湿っている彼女の髪をくるくると指に巻きつける。ドライヤー使えって言ってるのにこいつは聞きもしない。
髪からふわっと漂う甘い匂い。
同じシャンプーを使ってるはずなのに、綾瀬からは俺と違う匂いがする気がする。
脳が痺れるような甘ったるさを、俺は知ってる。
麻由ともこんな風にソファで座って、一緒にテレビを見て、笑いあって、それから、
……それから、キスをして。
「ねえ」と無意識に隣の彼女を呼んで、「はい」とこっちを向いた彼女の目を手で覆って目隠しして、ゆっくりと顔を近づける。
彼女の唇と自分のそれが触れた瞬間、俺は目を閉じて愛しい彼女を思い浮かべる。
麻由。
ただただ彼女の名前を、脳内で呼んで。
抵抗しない綾瀬に調子に乗ってそのまま唇をくっつけているけど、徐々に唇の感触が違うことに気づいてしまって、ここにいるのは綾瀬で、
ああ麻由はここにはいないんだって実感して。
名残惜しさを感じつつ顔を離し、手をどけると、綾瀬は動揺することなくこっちを見た。
綾瀬が無理やり口付けた俺に抵抗しなかったのは、きっと彼女自身も俺を真田と重ねていたから。
お互いがお互いを別の人と重ね合わせてキスをしてるなんて、世界中を探しても俺達だけだろうな。
「綾瀬、俺のこと真田だって思っていいから、もう一回…」
「……いいですよ、私のこと麻由さんと思ってください」
ごめん、ごめんね綾瀬。
最低だってわかってる。
わかってる上で、お願いしたし、お前は了承した。
再び綾瀬に目隠しして俺も顔を近づけると、目を瞑って麻由に口付けた。
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ましゅまろーず(プロフ) - 夏乃実さん» 成宮くんと元カノさんの区切りがやっとついたので、成宮くんには夢主さんとのデートを楽しんでもらってます笑 いえいえ、そんな私なんてまだまだです…!ありがとうございます( ´ ▽ ` ) (2017年3月27日 8時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - 初コメ失礼します!!毎回毎回ドキドキしながら読ませてもらってます。鳴ちゃん書くのがとっても上手くて尊敬します!更新頑張ってください^^* (2017年3月26日 23時) (レス) id: 926ac8ac50 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - *.-+樺虹+-.*さん» いえもう本当に私の理想の成宮くんを書いているだけなので…!笑 イケメンさを表現できているなら安心しました笑 樺虹さんありがとうございます!更新頑張ります♪( ´▽`) (2017年3月23日 22時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
*.-+樺虹+-.*(プロフ) - 突然コメント失礼します!もう鳴がイケメン過ぎてやばいです!! 占ツクから通知来ると、bitterhomeかな??って思うほど楽しみにしてます!!これからも頑張ってください!! (2017年3月23日 18時) (レス) id: 7b9748159c (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 胡美さん» 御幸くんはここでは成宮くんの友人ポジションという、キューピッド役になると思います笑 作者が真田くん好きなので出してみました! ありがとうございます^_^ (2017年3月20日 15時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年3月2日 18時