028.諦めた ページ28
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もう乗り慣れてきた車内。
後部座席ではなく、助手席に座る。シートベルトをつけると、成宮さんは車を動かし始めた。
「さっきの子、例の元カノ」
知ってる。
窓の外に目を向けて耳だけで成宮さんの話を聞く。
「甲子園で俺を見た時からずっとファンだったって、プロ入りしたばかりの頃に声かけてきて。
食事でもどうですかって言われて、まあ可愛いしいっかなーみたいなノリで会うようになってさ、情けないくらいすぐ麻由に惚れちゃって」
車は土手沿いを走る。
窓はしっかり閉まってて、成宮さんの声しか聞こえない。まるで外の世界から遮断されているみたいだ。
成宮さんは寂しそうに、けど懐かしむように語る。
「出会ってすぐつきあうことになったのに、麻由は専門学生で俺は野球選手で、会う時間は中々取れなくて、少しずつすれ違っちゃってさ。
もう1、2年くらい前になるのか、麻由にやっぱり鳴のファンでいたいって言われたんだ」
ファンから彼女に昇格し、
自ら彼女からファンへと降格。
つきあってる過程に何があったのかはわからない。ファンでいたいっていうのは口実で、ただ単に他に好きな人ができたのかもしれない。
この車に麻由さんは何度乗ったんだろう。
ずっと近いところで見てたはずなのにどうして、野球選手としての彼しか、愛すことができなかったのかな。
「…………まだ」
「……」
「麻由さんのこと、好きなんですね」
「……」
返事の代わりに、息で笑った。
それはどこか諦めたような。
「綾瀬と同居し始めた頃に偶然麻由と再会して、泣いててほっとけなくて、相談に乗ってあげたら今の彼と喧嘩しちゃったってさ。その延長戦でちょくちょく会うようになった」
「……チャンスじゃないですか」
「チャンスならよかったのにな」
「奪い返そうと思わなかったんですか?」
「思ったよ。思うに決まってる。俺なら泣かせないのにって内心嫉妬しまくり」
マンションに到着し、車を駐車場に停める。シートベルトを外す。私も成宮さんも降りようとせず、話を続けた。
「けど違うんだよな、きっと麻由は俺のいないところで泣いてたんだよ」
「……」
「今の彼氏の前では泣いたんだって。そんだけ心を許してる相手なんだろ。
だったら、好きな人の幸せを壊してまで、自分のものにしたいって思わない」
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ましゅまろーず(プロフ) - 夏乃実さん» 成宮くんと元カノさんの区切りがやっとついたので、成宮くんには夢主さんとのデートを楽しんでもらってます笑 いえいえ、そんな私なんてまだまだです…!ありがとうございます( ´ ▽ ` ) (2017年3月27日 8時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - 初コメ失礼します!!毎回毎回ドキドキしながら読ませてもらってます。鳴ちゃん書くのがとっても上手くて尊敬します!更新頑張ってください^^* (2017年3月26日 23時) (レス) id: 926ac8ac50 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - *.-+樺虹+-.*さん» いえもう本当に私の理想の成宮くんを書いているだけなので…!笑 イケメンさを表現できているなら安心しました笑 樺虹さんありがとうございます!更新頑張ります♪( ´▽`) (2017年3月23日 22時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
*.-+樺虹+-.*(プロフ) - 突然コメント失礼します!もう鳴がイケメン過ぎてやばいです!! 占ツクから通知来ると、bitterhomeかな??って思うほど楽しみにしてます!!これからも頑張ってください!! (2017年3月23日 18時) (レス) id: 7b9748159c (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 胡美さん» 御幸くんはここでは成宮くんの友人ポジションという、キューピッド役になると思います笑 作者が真田くん好きなので出してみました! ありがとうございます^_^ (2017年3月20日 15時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年3月2日 18時