020.幼馴染 ページ20
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夜風が私と俊平くんの間に境界線を引くようにさーっと流れる。
ふわっと揺れる髪の毛。
……言った、言ってしまった。
俊平くんの反応が怖くて、顔を上げられない。と言っても、掴んでる腕を離してくれる気配もない。
「いきなりそんなこと言われたって、はいそうですかって素直に受け止められるわけねーだろ」
俊平くんは優しい声色で言って、ふっと息を吐いて笑った。…怒ってないみたい。ただ、理由を求めてるんだ。私がなんでそんなことを言ったのか。
そのまま黙り込んでいると、俊平くんに手を引かれて球場の入り口へと戻った。
たった数分、僅かな時間。繋がれた手の温もりに何度泣きそうになったか。こんな気持ちになってしまうから、会いたくないのに。
「やっと戻ってきた」
「おー、あれが噂のAちゃんか」
成宮さんと、さっきまではいなかったキャッチャーの御幸さんがそこにいた。何故か御幸さん、私の名前を知ってるみたいだ。
「じゃー四人で飲みに行く?」
「鳴の奢りで♡」
「今日は割り勘でいいでしょ」
「ノリ悪いなー」
「どっちにしろ綾瀬の分は俺が払うことになるんだし!半分は負担してやるんだから」
待て、私は鍵を貰って早く帰りたいんだ。
勝手に話を進める二人においっと心の中でツッコミを入れる。
俊平くんは私の手を離すと少し振り返って「来るよな、Aも」と言った。私が返事に困っていると、「てか来い」と強制的に参加を求められたので、頷かざるを得なかった。
成宮さんの車に乗り、都心から少し離れた居酒屋へ。流れで成宮さんの隣に座り、向かい側には御幸さん、左斜め前に俊平くん。
「Aちゃん、俺のこと知ってる?」
「あ、はい。もちろんです!御幸さんのことを知らない人なんていないですよ」
「はっはっはっ、礼儀正しいじゃん。鳴の彼女」
「ちげーよ」
「冗談でもやめてください。吐き気がします…」
青ざめながら言うと、御幸さんに「仲良いな」と言われて、私が否定する前に成宮さんが「やめろ」と真顔で言ってその場は収まった。
「つーか真田、幼馴染ならこいつのこと泊めてやってよ」
「ちょ、成宮さん!」
成宮さんは猫目で私を指差す。
御幸さんはウーロン茶を一口飲むと「え、真田の幼馴染なの?」と驚いたように尋ねた。俊平くんは苦笑いして「まあ」と言った。
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ましゅまろーず(プロフ) - 夏乃実さん» 成宮くんと元カノさんの区切りがやっとついたので、成宮くんには夢主さんとのデートを楽しんでもらってます笑 いえいえ、そんな私なんてまだまだです…!ありがとうございます( ´ ▽ ` ) (2017年3月27日 8時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - 初コメ失礼します!!毎回毎回ドキドキしながら読ませてもらってます。鳴ちゃん書くのがとっても上手くて尊敬します!更新頑張ってください^^* (2017年3月26日 23時) (レス) id: 926ac8ac50 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - *.-+樺虹+-.*さん» いえもう本当に私の理想の成宮くんを書いているだけなので…!笑 イケメンさを表現できているなら安心しました笑 樺虹さんありがとうございます!更新頑張ります♪( ´▽`) (2017年3月23日 22時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
*.-+樺虹+-.*(プロフ) - 突然コメント失礼します!もう鳴がイケメン過ぎてやばいです!! 占ツクから通知来ると、bitterhomeかな??って思うほど楽しみにしてます!!これからも頑張ってください!! (2017年3月23日 18時) (レス) id: 7b9748159c (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 胡美さん» 御幸くんはここでは成宮くんの友人ポジションという、キューピッド役になると思います笑 作者が真田くん好きなので出してみました! ありがとうございます^_^ (2017年3月20日 15時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年3月2日 18時