018.忘れ物 ページ18
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「あ、忘れた……」
鞄の中を漁ってから鍵がないのに気がつき、2005の扉を前に思わず大きく溜息を吐く。両手には重たいレジ袋。
今日は珍しく成宮さんの方が早く家を出た。なんでも、試合前のトレーニングで早めに召集がかかったらしい。
なので今朝は成宮さんに起こされた。「寝顔こんなに可愛いくねー女初めて見た」と真顔で言われて一瞬で目が覚め、朝食は成宮さんの嫌いなものにしてやろうかと本気で思った。
そんな私に追い打ちをかけるかのように、家に入れないという罰ゲーム。私が何をしたというんだ。鍵を家に置いてきてしまったため、中に入ることができない。
どうしよ。
成宮さん帰ってくるの遅いしなあ。
ここでずっと待ってるのはきつい。泣きそう。
迷いながらスマホを確認すると、成宮さんからメッセージが届いていた。
____「今日、飲みに行くから夜はいらない」
ちょ、ちょ、ちょっと待て!!
飲みに行かれると家に入れない!
心の中でつっこんで慌てて成宮さんに返信しようと思ったが、多分気づいてくれないだろうなあ、とポケットにしまう。
…仕方ない。
球場まで迎えに行くか。そんなに遠くないし。
無駄な交通費はかかっちゃうけど。
駅から走るバスに乗り、両手に荷物を持ったまま球場に行った。試合は見れないけど、入り口ら辺にいれば見つかるよね。
誰かがホームランでも打ったのか、観客が湧く歓声がした。それを背中で聴きながらまん丸の月を見上げた。今日は満月か。
「……あれ、綾瀬?」
秋の冷たい夜風に手が赤くなってきた頃、深く帽子を被った成宮さんがようやく現れた。
「なにしてんのこんなとこで」ときょとんとしている成宮さんにグッと詰め寄り、「鍵貸してください!」と言った。
「あー、鍵家に忘れた感じ?」
「…………そうです」
「はは、ざまぁ」
「うーわ、そういうこと言っちゃうんですか。エースとは思えない」
「エースは何言っても許されるんだし」
いやいやいや…。本気でそう思ってるらしい成宮さんにはドン引きするわ。
「んじゃ、綾瀬も来れば。居酒屋」
「え、そんな、私なんか邪魔なだけですよ」
「うん、まあそうだね」
「そこは否定してください」
「あれ、お取り込み中?」成宮さんとの言い合いを遮って聞こえたのは、私のよく知る声の彼だった。まさか、と思って声のしたほうを見れば、彼と目が合う。
「…………A?」
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ましゅまろーず(プロフ) - 夏乃実さん» 成宮くんと元カノさんの区切りがやっとついたので、成宮くんには夢主さんとのデートを楽しんでもらってます笑 いえいえ、そんな私なんてまだまだです…!ありがとうございます( ´ ▽ ` ) (2017年3月27日 8時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - 初コメ失礼します!!毎回毎回ドキドキしながら読ませてもらってます。鳴ちゃん書くのがとっても上手くて尊敬します!更新頑張ってください^^* (2017年3月26日 23時) (レス) id: 926ac8ac50 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - *.-+樺虹+-.*さん» いえもう本当に私の理想の成宮くんを書いているだけなので…!笑 イケメンさを表現できているなら安心しました笑 樺虹さんありがとうございます!更新頑張ります♪( ´▽`) (2017年3月23日 22時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
*.-+樺虹+-.*(プロフ) - 突然コメント失礼します!もう鳴がイケメン過ぎてやばいです!! 占ツクから通知来ると、bitterhomeかな??って思うほど楽しみにしてます!!これからも頑張ってください!! (2017年3月23日 18時) (レス) id: 7b9748159c (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - 胡美さん» 御幸くんはここでは成宮くんの友人ポジションという、キューピッド役になると思います笑 作者が真田くん好きなので出してみました! ありがとうございます^_^ (2017年3月20日 15時) (レス) id: 8071ad0c84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年3月2日 18時