【◇】Bitter Home

015.欲しい ページ15

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「A、今朝のニュース見た？」

「ん〜？なんの？」

「成宮選手だよ！あんた野球好きじゃん。ほんとかっこいいよねー」

「………………そ、そーだね」





午前最後の講義を受けた後、美穂がスマホを片手に成宮さんの話を持ち出した。

かつては甲子園でも大活躍したスーパー投手の成宮さん。しかもルックスもいいとなれば、人気があるのもわかる。わかるんだけど。


やっぱり本性を知ってるせいか、完全に美穂に同意はできない。かっこいい成宮さんをイメージしようとしても、どうしても嫌味を吐いてにやにやする成宮さんが頭にちらついてしまうのだ。





「そーいえば、もうすぐAの誕生日だよね」

「よく覚えてたね。去年はすっかり忘れてて誕プレくれたのも二ヶ月過ぎてからだったのに」

「成長してんのよ私も！で、何が欲しい？」





教室を出て食堂の方に移動する。今日は出遅れてしまったせいか、食堂には小さな列ができていた。





「私が……欲しい、のは……」





とてもお金で買えるものじゃない。
そんな安いものじゃなくて、私には手が届かなくて、誰からももらえない。


私はあとどのくらい、この後悔を背負わなくてはならないんだろう。

美穂はふざけて胸を張って「しょーがないから奮発してあげるよ」とにやにやしながら私の顔を覗き込む。

私は乾くような痛みを喉に抑えて、強張る頰を無理やり上げる。





「うん…考えとくね」





「超高級なものにしたいから！」と負けじと冗談で言い返せば「ちょ、それは勘弁…」とさっきまでの威勢がすっかり消えてしまった美穂に、私はひとしきり笑った。



なんか私、性格悪くなったかもしれない。

まだ同居は二日目だけど、

それはきっと成宮さんのせいだ。





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