【◇】18 -eighteen-

07 -seven- ページ7

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人ごみに酔ったとはまさにこのことだろうというぐらいの、なんともいえない顔色でチンアナゴを見つめるAに苦笑いをする。



「ちょっと休憩するか」

「……大丈夫です。先輩、鯖好きでしょ、鯖見ましょう」

「いや、別に鯖の味噌煮が好きなだけだから」




少し大きめのイルカの泳いでいる水槽の前で、ちょうどソファーが空いたのでAを無理矢理座らせて、俺も隣にドスッと座る。

「水族館で急接近大作戦が…」とかぶつぶつほざいているAに「水飲んどけよ」とミネラルウォーターを渡してやると、「ありがとうございます」と受け取ってごくごくと飲み干した。




「うわぁーキレー…」




少し顔色が治ったAはぽやーっと水槽の中のイルカを見上げ始める。

いつもと違って、少しメイクをしているのか、まつげも髪もくるんとしていて女子っぽい。

彼女の目に水槽の中の灯りがキラキラと映って、あー水族館がデートスポットになる理由も少しわかるなと納得してしまう。


繋がれたままの手を少し動かすと、Aは気づいたように俺を見る。


「ん？」と小さく笑えば「………だからそういうの反則ですってば…」ともう片方の手で額を押さえる。




「その微笑み、写真に収めたいのでもう一度お願いしていいですか」

「いやだわふざけんな」

「実は倉持先輩にデートを実況しろと言われてるので写真を送らないと…」




とんでもないことを言いながら携帯を探すA。取り出した携帯を奪い取ると、確かに画面には倉持やらゾノやら沢村からの通知が来ていて、




「え、あ、ちょ、先輩」




なんか腹が立ったので電源をぶちっと切る。

「あー！」と叫ぶAに「ほら、続き行くぞ」と手を引いて立ち上がった。


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