*《回想 8》 ページ9
その日の朝、学院に着いてからメールが送られていることを確認すると、俺は職員室に向かった。
そこで担任の先生やお世話になった各教科の先生方に今日で学院に来るのは最後であることと感謝の気持ちを伝えた。
クラスにも担任の先生から話を切り出してもらい、無事に言うことが出来た。
最後だから、と人が集まってくる、わけもなく俺は今までと変わりなく最後の学院生活を終えた。
家に帰れば、あとはあいつに伝えるだけだ…。
最後のお別れを目前に、俺は、引っ越し準備が終わってほとんど何も無い部屋でただ1人、あいつから連絡が来るのを待っていた。
関係が希薄になった今となっては、あいつがいつユニット練習があり、いつ家に帰ってくるのかなど、知る由もなかった。
俺がうとうとし始めた頃、メールの着信を知らせる音がなった。
おそらく、あいつからだろうな…とメールを開けば予想通り、あいつから家に帰ったことを伝える文章があった。
……いよいよ、この時が来てしまったか、と震える手で「すぐ行く」とあいつに送った。
あいつの家に着いてから、何かを言われることもなく、部屋に通された。いや、言われなかったというよりは、聞きたいけど聞けないみたいな感じだった。
「その、話って…?」
「…ああ、ごめん。ちょっと言いにくいんだけどさ…」
普段俺はどちらかと言えば物事を言い渋るようなやつではなかったから、あいつは俺のそんな様子に珍しいとでも思ったのだろう。顔を見ればわかる、それぐらい、俺とあいつは仲が良かったんだ。
「…俺、どこか遠いところに行こうと思うんだ。」
「そんなことなら、休み合わせますよ?いつがいいでーー」
「そうじゃなくて、」
ああ、しっかりしているようでどこか抜けている幼馴染、
「そうじゃ、なくて、俺は。」
こんな地味な俺と親友なんて仲にまでなってくれた幼馴染、
「…俺は、つむぎに“さようなら”をしようと思うんだ。」
そんな幼馴染のことが、つむぎが、俺は、
大好きだった。
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作者名:あかね@中原組 | 作成日時:2018年2月13日 2時