望月の欠片【あんスタ】 (ページ34)

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英智の欠片　1/2 ページ34

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病院というところは本当につまらないところで、おかげで唯一の楽しみは病院食のデザートくらいになってしまっている。
実際のところ、毎日飽きもせずに見舞いやら遊びにやら来る人はおらず。
ひとり寂しくふわふわのベッドの上で静かに座っているのだ。

「……今日は、風が荒いね。雨が叩きつけるようだよ」

誰にいうでもなく、窓を静かに眺めながらぽつりと呟いてみた。
誰かが聞いているのなら、別に独り言なんて言わない。
誰もいないと油断して一人という空間に心を許して、そしてどうしようもなく暇だから呟くのだ。

我ながら何を言っているかわからないけど、僕にとってはそうなんだ。
だから、別にそこに女の子がいたなんて僕は知らない。意識して言ったわけでもない。
独り言を言いたくなった時に、その少女がいたのだ。

「さっき試しに外に出てみたけれど、雨が殴りかかってきたわよ？」

「…そうなのかい？それは大変だったねえ」

頬杖をついてこちらを見つめる少女。
彼女は真っ白な肌と、それに対照的な真っ黒な髪をしていた。
神秘的としか形容しがたい美しさで、このまま見つめていたら生気をすべて奪われてしまいそう。
死神のように美しかった。

「あなた、ひとり？」

「きみは？」

「ひとり」

Aという少女は、それからにっこりと笑って自分の病室へ帰っていった。
最後に「明日も来るわ」なんて可愛い言葉を残して。

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