第32話 ページ33
ある日の事、まるで世界から何かを切り取ったように学校の皆は朽木ちゃんの存在を忘れていた。
最初から彼女がいなかったように進むこの時間に嫌な寒気を覚えた。
彼女が居なくなって久しぶりに一護と並んで帰った。
けれど一護はどこか沈んだように暗く遠くを見ていた。
「ねぇ一護、一護は朽木ちゃんの事わかる?」
堪らずそう聞くと一護は驚いたように目を見開いて私を見た。
「A...お前、ルキアのこと覚えてんのか?」
その問いかけに私は小さく首を縦に振った。
「今日朝きて皆朽木ちゃんの事忘れたように普通に生活してて...少し...いや、凄く怖かった。」
そう言うと一護は一度口を開いたが、その口から言葉が発せられることはなかった。
だから一護の代わりに私がそっと口を開いた。
「ねぇ一護、隠してる事教えてよ。」
一護の瞳が狼狽するように大きく揺れる。
「な、何、言ってんだよ隠してる事なんて「嘘つき」」
一護の言葉を遮るように声を出し一護を見つめる。
「何年幼馴染やってると思ってるの?本当に私が一護の嘘見抜けないとでも思ってる?」
きっと一護も分かってる。
私が言ってる事は本当の事で、もう誤魔化せないと。
今まで私が見て見ぬふりをしていたという事も。
きっとずっと前から私達はお互いに気付いていたんだ。
護りたいが故に隠す一護に、背負わせたくないが故に見て見ぬふりをする私。
けれど私が見て見ぬふりを止めた今、どれだけ誤魔化しても私が引かないと一護はわかっている。
だから一護は諦めたように「お前首を突っ込むな。」とだけ吐き捨てた。
「一護何で!」
そう言って掴んだ腕もすぐに振り払われる。
「お前は何も知らなくていい。」
そう言って一護は私を置いて一人走り出してしまった。
____
浦原商店の地下の勉強部屋の入口の前で、膝を抱えて座り込む。
地下の奥の方からは一護の叫び声が木霊するように私の鼓膜にまで響いている。
「見に行かないんですか?」
後ろからいつの間にか来た浦原さんにそう問われる。
「いいの、私が行ったら一護は絶対修行を中断しちゃうから。」
一護の一段と苦しそうな声がまた響き渡る。
それに私はそっと瞳を閉る。
「心配ですか?」
「大丈夫だよ、一護の事だからきっと成功する。虚なんかになんてならないよ。」
「そうですか...」
浦原さんはゆっくり階段を降りていく。
「修行が終わったら教えますね」
「ありがとう。」
私は不安をかき消すように息を吐いた。
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マニ。(プロフ) - ✉️。こんにちは!いつも作品見ています。嫌じゃなければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💖 (1月22日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2023年11月28日 20時