"駆け落ち" ページ5
·Side:A
今日はまふくんとその新婦さんの結婚式。
本来ならば、私は友人として招かれている訳だから祝福しなければならない。
…けど、運命共同体のルールは相手の幸せを一番に願うこと。
まふくんが幸せになれないのならそんな結婚に意味は無い。
考えなんてあまり思い浮かばない。
そんなこんなで当日を迎えてしまった訳だけれど、自然と緊張はしなかった。
おおまかな脱出口ルートまでは確認しておいたので、後はスタッフさんだったりの目を誤魔化せばいいだけの話。
結婚式だから、と黒染めした髪を少し揺らすまふくん。
新婦が入場して愛を誓いあって式は誓いのキスまで進行していた。
どんなタイミングで止めればいいのかな、なんて考えていればもう取り返しのつかないところまで来てしまっていたのだから仕方が無い。
その場で立ち上がって
『すみません。その結婚、私は反対です。』
そう言った。
当然、周りの視線は一点、私だけに集まる。
そんなもの気にしない、と言った様子でずかずかと大股でパーティードレスの裾を揺らしながら新郎であるまふくんへと近づく。
そしてもう一度。
『私、この結婚反対です。
なので……新郎さんはいただきますね、』
まふくんの手首をきゅっと掴んで走り出す。
周りの人は皆呆気に取られたような顔をしていて、私は見せつけるようにぺろりと舌を出す。
( ごめんね、新婦様 )
きっと、あなたは本気でまふくんのことが好きだったんでしょう。
だってまふくんに対する声、視線、態度、全てが恋する乙女そのものだったから。
でもね、まふくんはあなたとの結婚は望んでいなかったの。
長めにとってしまったパーティードレスの裾が邪魔くさくて、片手で丈をたくし上げながら走る。
脱出口まではあと少し。
後ろから沢山の足音や声は聞こえるけれど、そんなもの知らんぷり。
ねえ、まふくん。
この式場を出たら何をしようか。
またいつもの様にぶらぶらと街を歩いて楽しいね、って笑い合えるのかな。
淡い期待心を持ちながらまたまふくんの手を握り直す。
その手がやけに男らしくて、胸がきゅんと苦しくなったような気がした。
248人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
如月 夢歌(プロフ) - 雪見さん» ひぇぇぇ尊敬だなんてこちらこそ恐れ入ります。。読んでくださっていたなんて…嬉しいです。頑張ってください〜! (2017年12月10日 19時) (レス) id: e1a8eff171 (このIDを非表示/違反報告)
雪見(プロフ) - 如月 夢歌さん» ありがとうございます!まさか如月夢歌さんに読んでいただけてコメントまで頂けるなんて恐れ多いです(汗)実は私、如月夢歌さんの作品を陰ながら拝見させて頂いております…。尊敬する方にそう言っていただけると嬉しいです!更新頑張ります! (2017年12月10日 19時) (レス) id: 21808aae1e (このIDを非表示/違反報告)
如月 夢歌(プロフ) - 一気に読ませてもらいました。間の取り方などこうやってとるのか…と勉強させてもらいました(*´∀`*)これからも読ませていただきたいと思います。更新頑張ってください(*^^*) (2017年12月10日 16時) (レス) id: e1a8eff171 (このIDを非表示/違反報告)
雪見(プロフ) - 千秋さん» ありがとうございます!! (2017年11月21日 23時) (レス) id: 21808aae1e (このIDを非表示/違反報告)
千秋 - かけ落ちぃぃぃぃ!!!!最高です…続き楽しみにしてます! (2017年11月21日 22時) (レス) id: 7653753f09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪見 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2017年11月19日 18時