【東京喰種:re】賞味期限切れの恋【平子丈/伊東倉元】

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ぱちり。
目を覚ますと、病院のベッドにもたれかかったまま。



時計の針は、鈴屋准特等が部屋を出てから3時間が経つか経たないかのところを指していて。



Aの腕に刺さる点滴と、鈴屋准特等の持ってきた花が、この状況が夢ではないことを教えてくれる。









(寝ていたのか。いつの間にか…)








ピッ…ピッ…
規則的に鳴り続ける心拍音がうるさくて、俺は耳を塞ぎたくなる。



色素の薄い天井に視線を移して、ため息を１つ。








(随分と、嫌な夢を見たな…)









--「うぐっ…ひっく、丈さぁん…」--









昔からAはそうだ。



何かあればすぐ俺のとこに飛んできて、愚痴をこぼしたり、…泣いたり。



ころころと変わる彼女の表情は見ていて飽きない。



わがままなところも、いつも俺を頼ってくれていると思えばなんだかんだ好きなところなのだ。









--「Aと、付き合うことになりました」--









______…ﾋﾟﾀﾘ.
俺の思考は、そこで停止する。



嫌な夢、とはつまりそういう事だ。
Aに、彼氏ができる夢。



夢の中の俺は嫉妬し、嫌悪し、憎み、取り乱す。
Aに彼女が出来るということは、俺が今まで彼女にしてきた事すべてを、その男に明け渡すという事なのだ。



それが、たまらなく許せなかった。



好きで好きでたまらなくて、馬鹿なこと間抜けなこと泣き顔困り顔怒り顔、その全て、もう他の誰かに渡す気なんてサラサラ無いということを。



こんな状況で、自らの夢に思い知らされることになるとは…



スースーと安定した寝息を立てる本人を前にして、そんな夢を見た自分がなんだか恥ずかしい。









(…ちゃんと、伝えないとな)









彼女の想いには気づいていたのに、随分と待たせてしまった。



冒頭は何にしようか。



どんな言葉でも、口下手な自分では何も伝えられない気がする。



Aは笑うだろうか。
もう今更期限切れだと、呆れられるかもしれない。



こんな、どうしようもない事を何度も考えてしまうほどに俺は、もうずっと…



重たくなる瞼に抵抗せず、再び目を閉じると深い眠りについた_______

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