10章 夏の終わりの始まりと ページ33
「ただいま。」
いつもと違ったテンションで、体育館へと入っていく。
そこにいたのは、レギュラーメンバーのみ。
「おかえりん、遅かったじゃん。」
「そう?」
いつもなら殴りたくなる原にも、今はそんな気持ちは起きない。
今の私の中にあるのはあの問いだけ。
これは一種の手段だ。
何度も私にそう言い聞かせる。周りの言葉なんて関係ない。
「おい、大丈夫か。」
「...何が。」
「...。いや、なんでもない。」
康が心配するなんてよっぽどなのかもしれない。
よく考えてみれば、自分が今どんな顔をしているかなんて全く分かっていなかった。
怒っているのか、笑っているのか。
はたまた、それ以外の何かなのか。
「ふは、おいA。」
「何。」
「お前、ここに何しに来たんだよ。」
「...は?何って来たときに言ったじゃん。キセキの世代を潰す。その為だって。」
「覚えてんならいい。ならとっとと昔を引きずんのやめろ。」
「誠凛はもうお前の仲間じゃねえんだからよ。」
真の言葉は私の中に落ちた。
あいつらを仲間と思っていたかと思えば違うかもしれない。
だがしかし、信頼をおこうとしていたのかもしれない。
でも違う。
本当に信頼をおくべきは今のこいつら。
霧崎の皆だ。
真、原、ザキ、康、瀬戸、松。
所詮、私も蜘蛛の手足にすぎない。
でも頭にその力を使えば、蜘蛛は永久に生き続ける。
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