8章 解剖 ページ27
季節は流れて夏。
体育館では、夏のインハイ予選の真っ只中だ。
でも、私達は試合はしていない。真の指示で夏には二軍を当てるらしい。
「で?態々こんなとこまで歩いてきたけど。ここでどこが試合するの。」
結構な距離を来た。
こんなところにまで来たのだから、さぞや見る価値のある試合なんだろう。
正直私はキセキの世代の実力を見ることが出来ればそれでいい。
そこから、糸口を見つけ出すのだから。
「今日は秀徳と誠凛が試合するらしいよん。」
「...へえ。」
誠凛。なんとなく懐かしい響き。
木吉が欠けてから全くだと聞いていたけれど今年はどうなのか。
対する秀徳は名の知れた強豪校。
それに、なんと言っても秀徳は今年キセキの世代、NO.1シューターの緑間を獲得している。
勝敗としては、既に分かりきったようなものだろう。
今日は緑間を観察することに徹したほうがいいかも知れない。
そんな私の予想もつかの間。
誠凛のベンチを見て、私は驚いた。一人、とてつもなく体格のいい男が居た。
見たことの無い顔だからきっと一年なのだろう。
有望株だ。
一目見て私はそう感じ取ることが出来た。
「ふむ、あれが噂に聞くスーパールーキーとやらか。」
「え、噂になってたのあの子。」
「ああ、よく聞いている。」
全く知らなかったんですけど。
康が聞いてるってことは真もどうせ知ってるんだろうし。
情報があったなら教えてくれたらいいのに。
「だが妙だな。」
「何が?」
「もう一人。噂になっている一年がいたはずなんだが。」
そう言われ、もう一度誠凛のベンチをみるもそれらしき人物はいない。
むしろ、あの男以外に目を惹くような人材が見当たらない。
噂はあくまで噂なのだろうか。
不思議な疑心を抱きつつも、私はじっくりと試合を見ることにした。
これからのための解剖。
始まりのホイッスルが今、高らかになった。
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