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私が体育館内に戻ると既に試合は終わっていた。
一点差で誠凛高校の勝利。決勝リーグに進出が確定した。
でも、決勝リーグは正直絶望的だろう。
木吉の存在はそれほどまでに大きい。今の誠凛には欠かせない存在なのだ。
きっと皆は今頃、木吉の見舞いに行っているのだろう。
...一応私も行っておくか。
ついでに今の考えも話しておきたいし。
そう決めた私は病院へと向かった。
場所は伊月が教えてくれたから問題は無い。
問題があるとするなら周りの空気だろうか。
正直、何しに来たんだって目で見られる気しかしない。
私そんな悪いことをした覚えは無いのだけれど。
まあ、そんなことももう関係なくなるのだけれどね。
あの発言をして。あんなに敵視されるとは思っても無かった。
でもそのお陰で新たなスタイルに出会えたとも言えよう。
誠凛でのバスケに固執していなくて良かった。
こんなときに真との会話を思い出しては笑ってしまう。
「友情ごっこなんてうぜえだけだっての。」
「うっわ、出たよ。確かにそうだろうけどさ。」
「青春だのなんだのと綺麗事ばかり言いやがる。信頼なんて虫唾が走るぜ。」
「信頼ねえ...執着しすぎてそれを信頼なんて言っちゃう人もいるもんねえ。」
執着。信頼。
今の私に誠凛に対するそれは無い。
またそれを向けられることも無い。
だからこそこうやってあっさり踏ん切りがついた。
イイ子ちゃんのバスケとはこれでさよなら。
私は一歩ずつ病院に足を踏み入れる。
木吉の病室に向かって。ゆっくりと歩いていった。
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