1Q ページ3
「久し振りだね、テツヤ君」
見かけた姿を追い掛けて、後ろから静かに声を掛ける。
突然名前を呼ばれた張本人は、少し驚いたようにピクリと反応して、振り向く。
微かな風に吹かれて、綺麗で鮮やかな水色の髪が揺れ___
「……お久しぶりです、光さん」
淡々とした声音でそう言いながら、体ごと私の方に振り向いた“彼”が、軽く頭を下げた。
その顔は相変わらずのポーカーフェイスで、でも少しだけ大人びた、落ち着きのある顔。
黒子テツヤ___中学時代の後輩。そして、高校時代もまた、後輩。
「思ってたより似合ってるね、誠凛の制服」
「そうですか?ありがとうございます」
ふと彼の姿を見て抱いた思いを口にすると、またも淡々とした声の返事が返ってくる。
でも、
「歩きながら本を読むのは、あまり良くないと思うよ」
「…ですが、ボクは」
「誰ともぶつからないとか、じゃなくて……物にぶつかるかもしれないでしょう?」
注意して、彼が口を挟んだ瞬間に、私も畳み掛けるように言葉を重ねた。
すると、確かにその通りだと思ったのか、彼が「それは…」と口を噤む。
……全くもう。やっぱり、君は中学の頃とそんなに変わらない。
そんなことを思いながら、私は入学式前までの僅かな間に、他愛ない会話を彼と交わす。
話していると、彼はとっくに目当ての“バスケ部”に、入部届を出した後らしかった。
相変わらず決めたら絶対曲げないなぁと笑えば、バツが悪そうに照れくさい顔をして、彼は「ほっといてください」と言う。
____それはまるで、中学時代と何ら変わらない、寧ろあの頃と同じように。
「_______」
「___________」
しんしんと、あるいは、ふつふつと。
一度道を違え、再び交るとは信じていなかった……
そんな感慨ばかりが、自然と胸の奥に湧き上がっていた。
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作者名:れんり@3回目 | 作成日時:2019年4月24日 20時