百十四話 ページ14
〜敦〜
聞かなくても分かる
Aちゃんは“それ”を強要されてきた
乱歩さんの言葉だからうなづいてるだけ
言葉の意味なんて理解していない
福沢「Aは先日の一件で私達が教えたこと全てがリセットされている。国木田。くれぐれも、くれぐれもAから目を離すな」
国木田「はいっ!」
乱歩「一度にあれこれ言うより、その都度、教えたほうが良さそうだ」
「A、違う?間違い?」
福沢「いや。間違っていない」
育った環境が悪かっただけで、Aちゃんが悪いわけじゃない
どうして、こんな小さな子供が理不尽なことを受け入れなければならないのだろうか
世間との認識のズレに気付かないほど染み付いてしまっている
だから探偵社のみんなは教え説くんだ
Aちゃんが間違えないように、間違ったまま大人にならないように
乱歩「A。今日は何して遊ぼうか」
あぁ、そうか
乱歩さんはこの散らばった書類を片付ける必要はないんだった
「お仕事、お手伝いする」
Aちゃんが拐かされて以降、仕事をさせることを社長はやめた
一人にして、また同じ目に遭わせたくない
もちろんAちゃん本人に言ってるわけじゃないから、仕事を手伝いたいと意気込んでいる
福沢「しばらく仕事は休みだ」
「休み?探偵社のお仕事、ない?」
福沢「Aの仕事が休みなだけだ。Aは大怪我をしたからな。休養が必要なのだ」
「与謝野が治してくれた。大丈夫」
福沢「それは分かっている。だが、万が一のことを考えて、休んではくれないか」
強制ではなくお願い
Aちゃんは力強くうなづいた
福沢「仕事ではないが……」
散らばった書類のうち、一枚を拾い口に入れようとするAちゃんから、慣れた手付きで取り上げる社長
乱歩「A。紙は食べない。いい?」
「食べない……分かった」
本当に初歩の初歩から教えないといけないんだ
福沢「国木田達とここを片してくれると有難いのだが」
「お片付け、する」
乱歩「ええー。遊ばないの」
「乱歩さん。お片付け」
乱歩「…………はぁ。分かったよ。じゃあ片付けが終わったら遊ぼ」
「うん!」
乱歩「で、社長は?手伝ってくれないの」
福沢「午前は会合があってな。本来ならAも連れて行きたいが、あまり聞かせたくない内容でな」
乱歩「ふーん。そ。A、社長に行ってらっしゃいって、言ってあげなよ」
「しゃちょ。行ってらっしゃい」
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年2月9日 21時