百十三話 ページ13
〜敦〜
Aちゃんが元に戻って数日後の出来事
今日は風が強い
とても強く吹いてて寒い
乱歩「雪だるま。おいで」
両手を広げる乱歩さんの元に、とことこ歩いて行けば抱き上げられた
乱歩「もう作り直したんだ。早いね」
「ジェラート、くれた」
乱歩「そっか。良かったね」
ナオミ「乱歩さん。室内ではそのコート、脱がないと暑いですよ」
乱歩「ええーー。いいじゃん。このままで。可愛いし」
それには全員が激しく同意
乱歩「もう……。A。脱げる?」
「しゃちょにやってもらう」
膝の上から下りて、これまたとことこ歩いて社長室に向かう
太宰「元気になってくれたのは良かったけど、この手で犯人に制裁を与えられなかったことは心残りだ。警察に犯人を引き渡さなければ、死にたいと思うほどの拷問をしてあげたというのに」
与謝野「おひげのおじちゃん、だったかねぇ。何者なんだい、乱歩さん?」
乱歩「僕達と同じく、Aのことが大好きで、守りたくて、それでいて臆病で繊細な、ただの老人だよ」
谷崎「分かったような、分からないような」
国木田「乱歩さんが敵ではないと断言しているんだ。俺達が気にしても仕方ないだろ。それより仕事をしろ。こら太宰!どこに行く!?」
太宰「まぁまぁ国木田くん。いやぁ、それにしても今日はとても良い天気だね」
国木田「は?いきなり何を……?なっ、待て太宰!やめっ……」
窓が開いた
そこから吹き抜ける風は、ありとあらゆる軽い物を吹き飛ばした
国木田「おい太宰!バカか。バカなのか。バカなんだな貴様は!!」
賢治「あー。書類も何枚か落ちちゃいましたね」
これはもう仕事どころではない
余計な手間をかけさせられて呆れていると、Aちゃんにズボンを引っ張られた
「これ。あそこ持ってく」
椅子を窓際に運んで欲しいという要望
移動させると、自力で登る姿が微笑ましくて心がほっこりする
福沢「Aっっ!!」
「う?」
声を荒らげた社長は叫ぶと同時に、一瞬で距離を詰めて、その手にはAちゃんを抱いていた
今、Aちゃんは……落ちそうに、いや、自分から落ちようとしていた
僕と鏡花ちゃん以外の人達は表情が硬い
かと思えば、乱歩さんがAちゃんに歩み寄り、膝を付いて両手を包み込んだ
乱歩「いいかいA。落ちた物を拾うのに窓から飛び降りる必要はない。分かった?」
「ん……分かった」
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年2月9日 21時