百十二話 ページ12
ーとある寒い日ー
〜福沢〜
夜中、子供が起きているには辛い時刻
Aはなぜか正座をしたまま、瞬きすることなく私を見ている
これだけの視線を送られると誰であろうと気付く
福沢「どうしたA」
「しゃちょ。起きてた」
そう言って自分の布団に戻る
福沢「A。おいで」
「大丈夫。一人で寝れる」
福沢「そうじゃなくて。私が寒いから一緒に寝て欲しいんだ」
「しゃちょ、寒い?」
福沢「あぁ。今夜は特別冷えるらしい」
寒さに鈍感はAがほんの少しではあるが、寒いと感じこっそりと私の布団に忍び込もうとした
じっと見ていたのも以前、乱歩に言われたように、声をかけたり顔を叩けば私が起きてしまうから
何を持ってして私が寝ていると判断するのかは分からぬが
「猫も一緒でいい?」
福沢「もちろんだ」
モゾモゾと入ってきては、ピッタリとくっつく
布団に入っていたはずなのに体はこんなにも冷えきっている
我慢をしなくていいと言ったところで、体温の変化そのものに気付いてないAに、言葉の意味は理解出来ない
「しゃちょ。おひげのおじちゃんとはいつ会う」
福沢「温かくなったら。春だな」
「春はいつ来る。明日?」
福沢「冬が終わってからだ」
「いつ終わる?」
福沢「四月。四月になれば、すぐ会える」
「四月……。ん、分かった。あとね」
福沢「A。寝なさい」
「……何で?」
素で驚かれた
「しゃちょは、お話しするの、嫌?」
福沢「っっ……」
可愛いからと甘やかしてはダメだ
たまたま目が覚めただけなら良いが、意図的に起き続けていれば明日以降も、この時間に目が覚めてしまう
癖になってしまうと中々に直らない
福沢「良い子は寝る時間だ」
「良い子……ん、寝る」
一瞬、悩んだな
良い子でいるよりも私と話しがしたかったと自惚れてもいいのだろうか
夜中でなくとも、朝になれば好きなだけ話せるというのに
「しゃちょ。おやすみのちゅー、する?」
福沢「どこで覚えてくるんだ、そんなこと」
「ナオミと観たドラマ」
福沢「そう、か」
Aにはまだ内容としては早い
子供向けアニメだけで留めておいて欲しい
福沢「また今度してくれ」
「分かった。おはようちゅーは、どうする」
福沢「それもまた今度だ」
目を閉じれば秒で眠るA
自然と笑みが零れる
いくら強がってもAはまだ子供であると証明された
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年2月9日 21時