甘い蜘蛛の巣・橙 ページ8
『メイドちゃ〜ん!』
掃除を終えたの同時に廊下に響き渡った元気な声。私は咄嗟に逃げようとすれば、後ろから大きな身体に抱き上げられた。
「ちょ…っと…!」
『捕まえた〜今日も僕の勝ちやね?』
「降ろしてよ!」
『嫌やね〜僕に構ってもらうもん』
そう言って足早に自室へと運ばれていく。
その途中使用人が話す会話に丸山くんの足が止まった。
〔Aってなんであんなに好かれてるんだろうな〕
〔なんか色目でも使ってんだろ。この前大倉さんと風呂入ってったの見たぜ?〕
〔あ、それなら深夜に横山さんの部屋から部屋着姿のA出てきたの見た〕
結構前から私と主の間でそういう関係にあるという噂が使用人達の間で流れている。気にしてなかったし私は5人のおかげで楽しくやれてるから昔から使用人とはあまり仲良くなかった。
まぁ…私以外女性が居ないのも理由の一つだけど。
丸山くんは私をゆっくり下ろすと、崩れた重い前髪から黒く淀み始める瞳と視線が重なった。
『ちょっと待っててなぁ?』
いつも通り微笑む彼の笑顔は少し崩れていて、ゆっくりと使用人の方へと向かって行った。
使用人の真後ろに立つと壁を強く殴りつけた重い音が廊下に響いた。
『誰が色目使ってるって?』
〔ま…丸山さん…!〕
『僕らの悪口なら全然聞き流せたんやけどなぁ……その話詳しく聞かせてくれへんかな?』
〔いや…これは…!〕
丸山くんは2人の首を掴むと壁に押し付けた。
『もう1回言ってみろって言うてんねん』
一瞬にして空気をピリつかせた丸山くんの威圧に2人の膝が震えていた。
「ちょっと…丸…」
『はいそこまで!丸!やり過ぎや』
私の肩を掴んで言葉を遮ったのは村上さんだった。
『チッ…うぜぇ…』
村上さんの声で丸山くんが手を離すと2人は床に崩れていった。
『はいはい。話は俺が聞くから。な?』
『次言ったら…絶対許さへん…』
丸山くんは2人を睨みつけるとゆっくりこちらへと戻ってきた。
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作者名:夜 | 作成日時:2021年11月10日 20時