【妖怪ウォッチ】ばすたーずはじめました！ー同族の嘆きの巻ー

【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ19

「それはもう良いとして。オキナ」

「ハッ」

「不審船の方はどうなっておる？」

ツクヨミは傍らに積まれていた巻物を一つ手に取り、広げ再びオキナに視線を戻す。
オキナは得意げな笑みを浮かべ、御安心を。と続けた。

「其方は解決済みでございます。不審船は宇宙空間ワープ境界の手前で我々国軍の宇宙部隊が抑えました。」

「そうか。中に乗っていたのは、何処の命知らずだ？」

「それが……」

オキナは更に笑みをより濃いものにして、クツクツと喉奥で笑った後口を開いた。
その報告に、ツクヨミは目を見開いた後で小さく舌打ちをする。

「……彼奴ら、まだ息をしておったのか。それだけでは飽き足らず、この妾を欺いて亡命を企むとは……。屑以下の家畜民族に情をかけ生かして逃してやったというのに……オキナ。妾は愚弄されている様じゃ。」

「ハッ、ツクヨミ様のお慈悲をこのような形で返すとは……断じて許されぬ愚行。して、どの様に致しましょう？」

ツクヨミはそんなオキナにため息をついた後で、口元を扇で隠し……心が痛むのぅ。とわざとらしい前置きをした後で目を細める。

「……消せ。骨も残すな」

「御意に」

はき捨てられたその言葉は慈悲の欠片も無いものだった。





「爺さん！薪になりそうなもん持ってきたっしょ！」

「お爺さん、畑に苗を植え終わったよ。早めに感染対策しないと」

あれから。ノルカとソルカは妖兎の集落に身を寄せていた。
毎日。あの子供…老人の孫であるラビィと共にゴミ山に繰り出しては、生活に使えそうな資材を運び出す。
体力に自信があるノルカは、せっせとものを運んではまた出かけてゆく。
知識が豊富なソルカは、この土地でも作物が育つよう。編み出した特殊な技法で畑を作った。

その合間に、老人から沢山の話を聞いた。
ノルカとソルカが見たことない世界の話。それはもちろん地球の事も含まれる。
年の功と言うべきか。老人は物知りで、ノルカとソルカの好奇心はどんどん膨らみ広がった。

しかし、ここの所老人はどことなく焦っていた。その理由は集落の皆が理解している。

地球への亡命要請の為に使わせた仲間が、いつまで経っても帰ってこなかった。

もうそろそろ音沙汰があってもおかしくないはず。

皆口には出さないが、過ぎるのは一抹の不安。
そんな皆の気を紛らわせようと、ノルカとソルカはとにかく明るく振舞った。

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